“孰(どつち)” の例文
與吉(よきち)は卯平(うへい)の側(そば)から斜(なゝめ)に手(て)を出(だ)して居(ゐ)た。卯平(うへい)は與吉(よきち)の小(ちひ)さな足(あし)の甲(かふ)へそつと手(て)を觸(ふ)れて見(み)た。手(て)も足(あし)も孰(どつち)もざら/\とこそつぱかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
田舎の隠居の方は、それにかけては気楽だけれど、お爺いさんは世話がやけて為方(しかた)がないでせう。だから孰(どつち)も駄目さ。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そこは晴代も遊びに行つたことのある芸者屋だつたが、そこで始まる遊び事は、孰(どつち)かといへば素人の加はつてはならない半商売人筋のものであつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
が、孰(どつち)かと云(い)へば、愛嬌(あいけう)もある、気(き)も利(き)く、画(ゑ)の趣味(しゆみ)も私(わたし)が莫迦(ばか)にする程(ほど)でもない。此(これ)と云(い)ふ長所(とりゑ)も面白味(おもしろみ)もないが、気質(きしつ)は如何(いか)にも丸(まる)く出来(でき)てゐる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
孰(どつち)も色が浅黒いところから、長火鉢は紫檀(したん)、食卓も鏡台も箸箱(はしばこ)も黒塗りといつた風の、世帯をもつ前後の他愛のない気分や、木山が遊び半分親店へ通つてゐる間に
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
別に孰(どつち)からも何とも口をきかないうちに、あの辺に一人くらゐ馴染のあることも公然の秘密みたいになつてゐたけれど、晴代は朧(おぼろ)げに想像して内心厭な気持がしてゐるだけで
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『フン、孰(どつち)が外聞が惡いんだらう。私や十歳(とを)の時から姉(ねえ)さんの御奉公してゐたんだよ。其で姉さんの手から、半襟(はんゑり)一懸(かけ)くれたこともありやしないで。チヨツ利いた風(ふう)な事を言つてるよ。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『嘘なもんか。實際だよ。』と松公は獨(ひとり)で笑つて、『第一己(おれ)は金さんに濟まないと云ふ、其も有るからね。が、孰(どつち)にしても行く。今夜必然(きつと)行く。』と胡散(うさん)くさい目色(めつき)をして、女を見下(みおろ)す。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「あんたとこのおでんと、孰(どつち)がおいしい?」蝶子がきくと
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)