始終しよつちゆう)” の例文
彼女は始終しよつちゆう笑つてゐた。その笑はあてこすつたやうな笑で、彼女の弓形ゆみがたをした高慢な唇にたえず漂つてゐる表情もまた同じであつた。
片目の小さい、始終しよつちゆう唇をめ廻す癖のある、鼻の先に新聞記者がブラ下つてる様な挙動やうすや物言ひをする、可厭いやな男であつた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
また始終しよつちゆう何か考へてゐるやうな顏をしてゐる十萬に近い町の民も、家も樹も川も一ツとして彼の心を刺戟する物が無かツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
世間には三年打捨うつちやつておいても、髪の毛一本伸びないやうな頭もあるが、記者の髪の毛は不思議によく伸びるので、始終しよつちゆう理髪床かみゆひどこの厄介にならなければならぬ。
取られちや生きてゐませんよ。三人のうち一人でも福岡の清の所へはやらないと始終しよつちゆうさう云つてるんですもの。子供だつて祖母さん孝行だから棄てゝ行きやしますまいよ。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「でも姉さんは一寸ちつと御変おかはりなさいませんがネ、私ツたら、カラ最早もう仕様しやうが無いんですよ、芳子などに始終しよつちゆう笑はれますの——何時の間にう年取つたかと、ほんとに驚いて仕舞ひますの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それからまたあなたにとつて人生といふものは始終しよつちゆう變つてゐて大騷ぎしてなくちやならないのよ。でなきやこの世は牢屋ですからね。
『嘘なもんですか。始終しよつちゆう那麽妙な咳をしてゐたぢやありませんか。……加藤さんが言つてるんですもの。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
著作家や牧師のやうな始終しよつちゆううちばかしにくすぶつてゐるのは一番の困り者で、出来る事なら船乗ふなのりや海軍軍人のやうな月の半分か、一年の何分なにぶんの一かを海の上で送つて
そしてこの頃ぢあ、あの方とお妹さんとはお互に犬と猫の寄り合ひみたいでね、始終しよつちゆう喧嘩ばかししてゐらつしやるのですよ。
その頃幕府の典薬に始終しよつちゆう讃岐守の世話になつてゐる男があつて、お礼の印に何がな贈り度いと思つてゐた。
わけても源作叔父の事に就いては、始終しよつちゆう心を痛めてゐたもので、酔はぬ顔を見る度、何日いつでも同じ様な繰事くりごとならべては、フフンと叔父に鼻先であしらはれてゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『蝙蝠傘をしてるのになあ、貴方あんた、それだのに此の禿頭から始終しよつちゆう雫が落ちてくるのですものなあ。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「相馬君つて毎日どんなにして暮してるね。始終しよつちゆう独語ひとりごとでも言つてるのかい、蟹のやうに。」
をかしい事には、此時お定の方が多く語つた事で、阿婆摺あばづれと謂はれた程のお八重は、始終しよつちゆう受身に許りなつて口寡くちすくなにのみ應答うけこたへしてゐた。枕についたが、二人とも仲々眠られぬ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
京都の西川一草亭氏は、相馬御風氏の論文を見て、こんなに始終しよつちゆう人生の事ばかり考へて居ては、さぞ肩が凝つて溜るまいと、自分の実弟おとうとかねて相馬氏と知合しりあひの津田青楓に訊いてみた。
(其処は私の室の前、玄関から続きの八畳間で、家中の人の始終しよつちゆう通る室だが、真佐子は外に室がないので、其処の隅ツコに机や本箱を置いてゐた。)編物に倦きたといふふうで、片肘を机に突き
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『ハア、うも。…………それでゐてう、始終しよつちゆう何か喰べて見たい様な気がしまして、一日いちんち口案配が悪う御座いましてね。』とお柳もはだかつた襟を合せ、片寄せた煙草盆などを医師いしやの前に直したりする。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
始終しよつちゆう怒られてゐたんですよ。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)