外目よそめ)” の例文
両六波羅探題の周章狼狽は、外目よそめにも笑止の程であって、隅田すみた通治、高橋宗康、この両将に五千の兵を付け、急遽討伐に向わせた。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なお、「外目よそめにも君が光儀すがたを見てばこそ吾が恋やまめ命死なずは」(巻十二・二八八三)があり、「わが恋やまめ」という句が入って居る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
れのみならず、いつぞやおいとが病気で十日ほども寝てゐた時には、長吉ちやうきち外目よそめ可笑をかしいほどにぼんやりしてた事などを息もつかずに語りつゞけた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
米友がその勝手に迷っている間に、犬は解放を予期して容赦なく喜び狂うから、それで、外目よそめにはいつまでも大格闘が続くようにしか見られないのです。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
外目よそめには、松子さんは、きのふもけふも同じやうに、うん/\とうなりつゞけてゐるので、別に変つたこともありませんでしたが、お医者さんの聴診器によると、松子さんの病気は
身代り (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
私が上りました頃の御夫婦仲というものは、外目よそめにもうらやましいほどの御むつまじさ。旦那様は朝早く御散歩をなさるか、御二階で御調物しらべものをなさるかで、朝飯前には小原の牝牛うしの乳を召上る。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
其ほど、此頃の郎女は気むつかしく、外目よそめに見えていたのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
外目よそめには阿片の夢に酔ふ人も寂しげに寝てべつの事無し
世に安き人を外目よそめに羨むな我をも人のかくこそは見め
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
外目よそめに笑ふひまも無く
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それのみならず、いつぞやお糸が病気で十日ほども寝ていた時には、長吉は外目よそめ可笑おかしいほどにぼんやりしていた事などを息もつかずに語りつづけた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
岸を上ってみたり、下ってみたりするこの女の挙動は、外目よそめに見れば、物狂わしいもののようにも見えます。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其ほど、此頃の姫は気むづかしく、外目よそめに見えてゐるのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
物羨みしたりして、外目よそめにも可傷いたはしく思ひやられる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
また自分の腰がグタグタと砕けて、力負けをしてしまったり、本人は一生懸命のつもりだろうが外目よそめで見れば、屍骸を玩具おもちゃにして四十八手のうらおもてを稽古しているようで
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いやしくも弁慶ほどの者が、あるじたるものの身体からだに鞭を当てねばならぬ心中の苦痛はいかばかり……外目よそめには強く打つと見せて、腹の中は血の涙で煮え返る、その心の中は千万無量だ。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)