壮健じょうぶ)” の例文
旧字:壯健
二人とも日常ひごろ非常に壮健じょうぶなので——わずらっても須磨子が頑健がんけんだと、驚いているといっていたという、看病人の抱月氏の方がはかばかしくないようだった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
姉さんは壮健じょうぶそうに成ったばかりでなく、晴々とした眼付で玉木さん達の噂をした後に、めったに口にしたことのない仮白こわいろなぞをつかうほど機嫌が好かった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
壮健じょうぶな時と同様にガラガラしていたが、底力そこぢからが抜けていて、一緒に声を合わして笑う事が出来なかった。
それは子供の時分のことですが、この頃はまた、すこしの音響ものおとにも驚愕びっくりするくせが付き、そして明るい光線を見るのが非常な苦痛です。体は至って壮健じょうぶですが、全体に痛みを覚えます。
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
目鼻立は十人並……と言うが人間並で、色が赤黒く、いかにも壮健じょうぶそうで、口許くちもとのしまったはいが、その唇の少しとがった処が、化損ばけそこなった狐のようで、しかし不気味でなくて愛嬌あいきょうがある。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壮健じょうぶの時と同じように平気な顔をして談笑していてもおのずと憂愁に閉ざされて話を途切らしがちだった。
彼は七層ばかりある建築物たてものの内の第一階の戸口のところで、年とった壮健じょうぶそうなおんなの赤黒い朝の寝衣ねまきのままで出て迎えるのに逢った。その人が下宿の主婦かみさんであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このお房の発熱は一晩若い親達を驚かしたばかりで、彼女は直に壮健じょうぶそうな、好く笑う子供にかえった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吾儕われわれが豊世さんからうらやまれるようなことは何にも無いサ——唯、身体が壮健じょうぶだというだけのことサ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ほんに、この児は壮健じょうぶそうな顔をしてる。眼のクリクリしたところなぞは、三吉の幼少ちいさい時に彷彿そっくりだぞや……どれ、皆な好い児だで、伯母さんが御土産おみやを出さずか」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この児の姉さん達の方がずっと壮健じょうぶそうだった。ところが姉さん達は死んでしまって、育つかしらんと思った泉ちゃんの方がこんなに成人しとなって来た——分らないものだね
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「これで御郷里おくにの方へでも連れていらしッたら、また壮健じょうぶに成るかも知れません」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
奉公人を多勢使って贅沢ぜいたくに暮して来た日までのことに比べると、すべて新たに習うようなものである。とはいえ、お雪は壮健じょうぶな身体を持っていた。彼女は夫を助けて働けるだけ働こうと思った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ヨウ、日に焼けて、壮健じょうぶそうな児だわい」と達雄も快濶かいかつらしく笑った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)