四半刻しはんとき)” の例文
「二人はブラブラ歩いて居りました。竹屋の渡しで船をおりて、それから兩國まで、話し乍ら歩いて居ると、四半刻しはんときはかゝりますよ」
四半刻しはんとき、半刻、一刻と、やがて三時間近くも、押し黙って依然ごろりとなったままでしたから、とうとう初雷が夕だちを降らせました。
ただいちど、独りでみまったときも、ほんの四半刻しはんときあまりしかいなかったし、そのときでさえも、深入りをした話しは、二人ともしなかった。
「最前から四半刻しはんときも、あれに立って慄然りつぜんとしたまま、動き得ないようにすくんでいる様子からして何とも不審な挙動だ」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もしこの芳香をたてつづけに、四半刻しはんときというものをきいていたならば俺はそれこそ色情狂いろきちがいになろう」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「二人はブラブラ歩いておりました。竹屋の渡しで船をおりて、それから両国まで、話しながら歩いていると、四半刻しはんときはかかりますよ」
あやうく鳴らそうとしたのを、目顔でしかりながら繰り返すこと四半刻しはんとき。——しかし、その目は絶えず鋭く動いているのです。
そのときおせんはたとえようもなく複雑な多くの感情を経験した。あとになって考えると、わずか四半刻しはんときばかりのその時間は、彼女の一生の半分にも当るものだった。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ちょいと立会って貰いたいことがある。板倉屋は清吉兄哥あにいに任せて、ほんの四半刻しはんとき清川へお顔を貸して下さい——と丁寧に言うんだぜ」
勢い込んで、手代のあとに従いながら、駆けだしていったようでしたが、ものの四半刻しはんときもたたないうちにすごすごと帰ってきたのは、伝六、辰の両名でした。
お君の話のテンポの遅さと、八五郎の逢曳あいびき? を享楽する心持こころもちられて、いつの間にやら四半刻しはんとき(三十分)ほどの時間はちました。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
四半刻しはんとき、半刻と、ついには一刻近くもじっと考え込んでしまったものでしたから、鳴り屋の千鳴り太鼓が、陰にこもって初めは小さく、やがてだんだんと大きく鳴りだしました。
それからまた四半刻しはんとき(三十分)経ちました。事件は実に、突拍子もない形で、予想もしない破局へ押上げられていたのです。
待つ身には、四半刻しはんときが二刻にも三刻にも思えるような長さでした。
ものの四半刻しはんとき(三十分)も経った頃、平次は小脇に千両箱を抱えて勝ち誇ったように縁側に現われました。それを見ると
待ち遠しい四半刻しはんときでした。
それに、時計もラジオもない世の中で、半刻はんとき(一時間)や四半刻しはんとき(三十分)の喰い違いは、どうにでも誤魔化ごまかせたのです。
四半刻しはんとき
平次がすっかり緊張して、検屍の役人が来るまでの、たった四半刻しはんとき(三十分)ばかりを、恐ろしく能率的に使いました。
それから、顔を揃えるまでには四半刻しはんとき(三十分)もかかりましたが、平次は寸刻も無駄にせずに、仕度の出来たのから順々に逢って行ったのです。
これが徳之助を救う方法と聞かされなかったら、どんなに父親が引止めたところで、四半刻しはんとき(三十分)とも我慢をするお富ではなかったでしょう。
「梶さんがお出かけになったのは戌刻いつつ(午後八時)少し過ぎ、お嬢さんがお出かけになったのは、それからまた四半刻しはんとき(三十分)も後でございました」
お万に指図をして、二階から帰った人の膳を下げたり、それから後は二階へ坐り込んで四半刻しはんとき(三十分)ばかりの間、四畳半を覗かなかったというんです
それから四半刻しはんとき(三十分)ばかりも、竹の市を責めてみましたが、何としても、「千里の虎」だとは言いません。
未刻やつ半に始まって、四半刻しはんとき(三十分)もかかりゃしません、何分この仕事は急がせられておりますから」
お仲はフトそんなことに気が付いたのは、久吉が帰ってから四半刻しはんとき(三十分)も経ってからのことです。
見るのも、ガツガツしているようでたしなみが悪いと思い、四半刻しはんとき(三十分)ばかり経って、汗も乾き、心持も落着いたところで、四人立会いのうえ開けてみました
その間ほんの四半刻しはんとき(三十分)ほど。——遅れたというほどではなかったが、当の敵藤枝蔵人は、その時もう人に斬られて、橋の袂にあけに染んでこと切れていたのだ
闇の中から湧いたような男が一人、清水屋敷の表からそっと入って行って、四半刻しはんとき(三十分)ほど経つと、もとの表口から四方あたりを忍ぶ様子でスルリと滑り出しました。
やや四半刻しはんとき(三十分)ばかり、四方あたりが雀色になった頃に、平次は勝ち誇った様子で帰って来ました。
亥刻よつ(十時)にこの家を出て、四半刻しはんとき(三十分)もかかって妻恋坂に着いている、申開きが伺いたい
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし、美しい夕陽と十六の灯明と、甘美な香の煙と、素朴な祈りと、静かな音楽は、四半刻しはんとき(三十分)経たないうちに、多勢の人の心をすっかりとらえてしまいました。
番頭の徳三郎が帰ったばかり、その口から聞いた「あやかし」が四半刻しはんとき(三十分)も経たないうちに、越前屋の主人を殺した——と平次が直感したのも無理のない事でした。
それからざっと四半刻しはんとき(三十分)ばかり、いいかげんしびれのきれた頃くぐもんをギーと開けて
番太の親爺が迎えに行ってから、四半刻しはんとき(三十分)も経つでしょうが、綾吉の死に様の凄まじさに、十二三人の若い同勢も、ツイ口を切る者もないほど緊張していたのです。
とにもかくにも小僧を走らせて、百人町の重吉を呼んだのはそれから四半刻しはんとき(三十分)の後。
下女のお初を呼んで訊くと、正にお道の言った通り、勇次郎の望みで、荘太郎の許しを受けて離室へ行き、薄茶を立てて、四半刻しはんとき(三十分)ほど経ったというだけの事でした。
「よく考えてみるがいい。俺は四半刻しはんとき(三十分)ばかり、屋敷の内外を見廻って来る」
それから四半刻しはんとき(三十分)と経たぬうちに、事件は思わぬ大発展をしました。
奥の一と間に集まったお通夜の衆は、世間体を憚って、本当の近親ばかり、平次はその中に交って、百万遍の数珠じゅずを繰ったり、線香を上げたり、神妙らしい四半刻しはんとき(三十分)を過しました。
どこから槍が来るか、どこから鉄砲が来るか、それは全く不安極まる四半刻しはんとき(三十分)でしたが、平次は小判形の迷子札とにらめっこをしたまま、大した用心をするでもなく控えております。
あとの三人はおたなの人達と一緒に、バラバラに出掛けるうち、——私は家から使いの者が来て、途中から瓦町かわらまちまで引返し、四半刻しはんとき(三十分)ばかり手間取って来ると、この始末でございました
昨夜ゆうべの泥の付いた袷を引掛けたまま飛出したのは、それから四半刻しはんとき(三十分)ばかり後のことですが、八五郎は骨の髄まで女臭くなったような気がして、神田川へ飛込んで洗おうか——といった
「——金を出せ——ただそれだけです。何にも言いません。それっきり黙りこくって、四半刻しはんとき(三十分)もジッとしているんですもの、命より惜しい虎の子だって隠し切れるものじゃありません」
四半刻しはんときも經つた頃、淺草寺せんさうじの晝の鐘が鳴りました。ど、どーんと」
これだけのことを言うのに、ざっと四半刻しはんとき(三十分)もかかりそうです。この調子で地代家賃の居催促いざいそくをされたら相手はさぞ参るだろうと思うと、ポンポン言いながらも平次はツイ可笑おかしくなります。
「皮肉を言っちゃいけません。螢沢の朝倉屋の寮の方は、たった四半刻しはんとき(三十分)で調べが済みましたが、池の端まで帰って来ると、湯島の吉の野郎に逢って、久振りだから一杯つき合いねえと——」
とびの者と久良山三五郎の問答の間に平次は八五郎ともう二人の岡つ引を走らせ、人混みを東西の橋番所にやつて、たもとに血の附いた浴衣ゆかたを着た女を探させましたが、四半刻しはんときつてもそんな女は見當らず
「鐘を聴いてから、四半刻しはんとき(三十分)も経ったように思うか」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ガラッ八は四半刻しはんとき(三十分)ばかりすると帰って来ました。