噛砕かみくだ)” の例文
旧字:噛碎
御経おきやうふしをつけて外道踊げだうをどりをやつたであらう一寸ちよツと清心丹せいしんたんでも噛砕かみくだいて疵口きずぐちへつけたらうだと、大分だいぶなかことがついてたわ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
愛撫あいぶするだけではあきたらず、それを愛するの余りに、彼は、ギルガメシュ伝説の最古版の粘土板を噛砕かみくだき、水にかして飲んでしまったことがある。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
吹きなびかせ麦酒ビールの盃に投入るるブツカキの氷ばりばりと石を割るやうに噛砕かみくだく当代紳士の豪興ごうきょう
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それもね、玄関番の歯太郎はたろうさんが噛砕かみくだいてよこしてくれればいいけれども、今朝なんぞは歯太郎さんが遊んでいてまるで鵜呑うのみだからね。その代りおかしい事があったゼ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
けれども驢馬なんてものは考えがないから、しまいにはラッパを噛砕かみくだいてしまった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
噛砕かみくだくと不味まづう御座いますから、微温湯ぬるまゆか何かで其儘そのまんまみになる様に。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
確かり歯をくいしばって居りますから、自分に噛砕かみくだいて、ようやくに歯の間から薬を入れ、谷川の流れの水をすくって来て、口移しにして飲ませると薬が通った様子、親切に山之助がさすって遣りますと
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょっと清心丹せいしんたんでも噛砕かみくだいて疵口きずぐちへつけたらどうだと、だいぶ世の中の事に気がついて来たわ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)