哄然こうぜん)” の例文
あらず、あらず、彼女かれは犬にかまれてせぬ、恐ろしき報酬むくいを得たりと答えて十蔵は哄然こうぜんと笑うその笑声はちまた多きくがのものにあらず。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
こんどは、哄然こうぜんたる声を、官兵衛は暗やみへ放った。そして詩でも吟じるがごとく、自嘲じちょうの感を、ひとり壁に向って云っていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひつゝ法華僧ほつけそう哄然こうぜん大笑たいせうして、そのまゝ其處そこ肱枕ひぢまくらして、乘客等のりあひらがいかにいかりしか、いかにのゝしりしかを、かれねむりてらざりしなり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「骨が舎利になろうともこの鬼王丸さようなことはいかないかなすることではないわい!」一丈余りの白髪を左右にパッパッと振りながらまたもや哄然こうぜんと笑い捨てた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして、一人の——かの Scabies を患っている青年は、自分のてのひらを直角に頸部けいぶに当て、間もなく自分の首が切断せられることを示しながら、しかも哄然こうぜんと笑ってみせた。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その中にも百姓の強壮な肺の臓から発する哄然こうぜんたる笑声がおりおり高く起こるかと思うとおりおりまた、とある家の垣根かきねに固くつないである牝牛の長く呼ばわる声が別段に高く聞こえる。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
三人は思わず哄然こうぜんと笑い出した。主人も本をよみながら、くすくすと笑った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふたりはいっしょにぴょこりと頭をさげあって、哄然こうぜんと上を向いて笑った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
蒲田は哄然こうぜんとして大笑たいしようせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
哄然こうぜんとして笑いました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この時五助はお若の剃刀をぴったりとにあてたが、哄然こうぜんとして
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人は哄然こうぜんと笑い合った。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
愛吉は腕をそらし、脚を投出したまま哄然こうぜんとして
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へいげんは哄然こうぜん大笑して
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先生哄然こうぜんとして
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)