名妓めいぎ)” の例文
ぽん太はそのころ天下の名妓めいぎとして名が高く、それから鹿島屋清兵衛さんに引かされるということでしきりにうわさに上った頃の話である。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
数年前に吉州という評判の名妓めいぎ請出うけだし、ふっと姿をかくした利左衛門りざえもん、それが、まさか、と思えども見れば見るほど、よく似ている。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その母は、おさいといって、やはり根は廓者さとものであったけれど、いわゆる仲之町なかのちょうの江戸前芸者で、名妓めいぎといわれたひとであったそうな。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも著者なかま、私の友だち、境辻三によって話された、この年ごろの女というのは、祇園ぎおん名妓めいぎだそうである。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
敷居際で靜かに挨拶したのは、最早名妓めいぎといつたおもかげはありませんが、如何にも洗練せいれんされた美しい女房振りです。
蝶太夫師匠は岸沢のたて三味線で、世間からやんやと騒がれている、柳橋きっての名妓めいぎをかみさんにしたうえ
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
高級にして近づきがたい名妓めいぎよりも、銘酒屋のガラス越しに坐せる美人や女給、バスガアル、人絹、親子どんぶり、一銭のカツレツにさえも心安き親愛を感じる事が出来る。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
踊りや長唄ながうたを、そのころ愛人の鹿島かしまと一緒に、本郷の講釈場の路次に逼塞ひっそくし、辛うじて芸で口をしのいでいた、かつての新橋の名妓めいぎぽん太についてみっちり仕込まれたものだったが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
花柳界には止名とめなというものがあって、名妓めいぎの名をやたらに後のものに許さない。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
学生時代に、友人に連れられて祇園ぎおんのお茶屋に行ったときなど、彼はそこに来た二十四五になる美しい名妓めいぎから、一目惚れされた。彼女は、彼を追って階下へ降りると、彼の耳にささやいた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
谷本博士と名妓めいぎ7・13(夕)
やがてもの言わぬ花にもきて、島原しまばらに繰り込み、京で評判の名妓めいぎをきら星の如く大勢ならべてながめ、好色の手下の一人は、うむとうめいて口にあわを噴きどうとうしろに倒れてそれお水それお薬
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
浅草のなに太郎とかいう名妓めいぎに恋され、その名妓は彼のために身ぬけとかいう冒険を敢えてして結婚し、旅まわりなどにもいっしょに付いてまわったのであるが、現在、彼女は元の土地の浅草で
陽気な客 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)