可愛想かわいそう)” の例文
いいよ親方からやかましく言つて来たらその時の事、可愛想かわいそうに足が痛くて歩かれないと言ふと朋輩の意地悪が置ざりに捨てて行つたと言ふ
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「東京でも所によると二尺位い積った年もあった」というたら、亭主は「へへー、それじゃ祭文語りは可愛想かわいそうでした」
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
愛想あいそが尽きたか、可愛想かわいそうな。厭気いやきがさしたらこの野郎に早く見切をつけやあナ、惜いもんだが別れてやらあ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
文鳥は可愛想かわいそうな事を致しましたとあるばかりで家人うちのものが悪いとも残酷だともいっこう書いてなかった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
可愛想かわいそうなことをとすこなみだくんでおさくをかばふに、それは貴孃あなた當人たうにんぬゆゑ可愛想かわいさうともおもふからねど、おさくよりはれのほうあはれんでくれてはづ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
可愛想かわいそうに、あれだって研究でさあ。あの球を磨り上げると立派な学者になれるんですからね」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とにかく可愛想かわいそうですよ。そんな事をするのがわるいとしても、あんなに心配させちゃ、若い男を
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人は「帰るかい」と云った。武右衛門君は悄然しょうぜんとして薩摩下駄を引きずって門を出た。可愛想かわいそうに。打ちゃって置くと巌頭がんとうぎんでも書いて華厳滝けごんのたきから飛び込むかも知れない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
月々金をみついでやる? 貢いでくれと誰が頼んだ。小野の世話をしたのは、泣きついて来て可愛想かわいそうだから、好意ずくでした事だ。何だ物質的の補助をするなんて、失礼千万な。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんな面白い話をしている間に、時々下の家族がうわさのぼる事があった。するとK君はいつでもまゆをひそめて、首を振っていた。アグニスと云う小さい女が一番可愛想かわいそうだと云っていた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしその丸い顔を半分かたぶけて、高い山の黒ずんで行く天辺てっぺんを妙にながめた時は、また可愛想かわいそうになった。それからまた少し物騒になった。なぜ物騒になったんだかはちょっと疑問である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
考え直すって、直しようのない明々白々たる理由だが、狸があおくなったり、赤くなったりして、可愛想かわいそうになったからひとまず考え直す事として引き下がった。赤シャツには口もきかなかった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
馬鹿気ばかげた感じだから滑稽こっけいのように思われるけれどもその時は正直にこんな馬鹿気た感じが起ったんだから仕方がない。この感じが滑稽に近ければ近いほど、自分は当時の自分を可愛想かわいそうに思うのである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
可愛想かわいそうに。一人ひとりだって阿蘇ぐらい登れるよ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「比田はあんな奴だが、御夏が可愛想かわいそうだから」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうですか。可愛想かわいそうに」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
可愛想かわいそうに」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)