勤行ごんぎやう)” の例文
これを見た山男は、小鳥さへかくは雄々しいに、おのれは人間と生まれながら、なじかは三年みとせ勤行ごんぎやうを一夜に捨つべいと思ひつらう。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
丁度ちやうど日曜の勤行ごんぎやうに参り合せたのを初めに、今この筆を執る日まで丸八日やうか経つ間に倫敦ロンドン寺と博物館と名所とを一通り見物して仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「どうぞおかまひくださるな。なんでもありませんから。」セルギウスは殆ど目に見えぬ程唇の周囲まはりを引き吊らせて微笑みながら、かう云つた。そしてその儘勤行ごんぎやうを続けた。
それがし山に入りてより、四年四月よとせよつきは日夜撓まず勤行ごんぎやう苦行、ひたすらに頓漸とんぜん秘密の理を追へども……(また咏嘆の調にて)かの日の幸に比べむ幸なく、わがき人に似る神も……
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
然れども斯く嘲りたる平民的短歌の史論家(同じく愛山生)と時をおなじうして立つの悲しさは、無言勤行ごんぎやうの芭蕉より其詞句の一を仮り来つて、わが論陣を固むるの非礼を行はざるを得ず。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
早春風やはらいで嫩芽どんが地上に萌ゆるより、晩冬の寒雪に草根のそこなはれむを憂ふるまで、旦暮たんぼ三百六十日、生計の為めにすなる勤行ごんぎやうは、やがて彼が心をして何日しか自然の心に近かしめ、らしめ
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夕の勤行ごんぎやうの鐘響く頃、姫と媼とを伴ひて御寺みてらの燈籠見に往きぬ。
しろくなよなよとひらく、あけがた色の勤行ごんぎやうの薔薇の花。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
大般若転読をする勤行ごんぎやうに争ひて降る山の雨かな
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
しめやかに勤行ごんぎやう營む白髮長身の僧。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
そこで、彼は、朝夕の勤行ごんぎやうをすましてしまふと、何時でも、その畑へ来て、余念なく培養につとめてゐた。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
若しこの服従と云ふことがなかつたら、ステパンは日々にち/\勤行ごんぎやうの単調で退屈なのに難儀したり、参詣人の雑沓をうるさがつたり、同宿の不行儀なのを苦に病んだりした事だらう。
朝の勤行ごんぎやうが白い法衣はふえ金色こんじき袈裟けさの長老を主座にして行はれてる最中であつた。初めて見るビザンチン式の建築やモザイクの壁画はゴシツクやルネツサンス式以外に古雅な特色をつて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
思ふに天主もごへんの信心を深うよみさせ給ふと見えたれば、万一勤行ごんぎやう懈怠けたいあるまじいに於ては、必定ひつぢやう遠からず御主『えす・きりしと』の御尊体をも拝み奉らうずる。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
禅院の朝の勤行ごんぎやうはてぬればまた歎かれぬ山上のかく