)” の例文
が自分の傍からこの精霊を退散させる力が自分にないと同様に、この覆い物をくるだけの力がどうしても彼にはなかった。
お光さんは、腰をおろすとすぐに、それを彼の手の下からむしるようにくって、四、五枚、ペラペラと見てはくり返して
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次にこの野蛮人もしくは、原始人の皮を今一度くってみると、その下には畜生……すなわち禽獣きんじゅうの性格が一パイに横溢している事が発見される。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
距離の加減で、ったりと落ちつきはらって、南の空を、のたくっている、それでも尖りに尖った山稜の鋭角からは、古い大伽藍の屋根の瓦が、一枚一枚くられては、落ちて砕けて
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
いいながら、役人たちは、ずかずかと歩き廻り、自身でも、船板を上げたり苫をくったり、厳しい眼を光らしていたが
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし一度ひとたびその肉体の表皮をくって、肉を引き離し、内臓を検査し、脳髄や五官の内容を解剖して細かに観察してみると、その各部分部分の構成は一つ一つに
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
有明けの空のような、仄白ほのじろい、おびえた女の顔が、斜めに頭巾からくり出されたが、そのとたんに、波越八弥は、ほとんど、喪心そうしんするような驚きをあらわして
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まず所謂、文化人の表皮……博愛仁慈、正義人道、礼儀作法なぞで粉飾してある人間の皮を一枚くると、その下からは野蛮人、もしくは原始人の生活心理があらわれて来る。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だが、それをくッて見たとたんに、舟辰は、あっといったきり、いた口がふさがらなかった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吾輩は白い布片きれの下で全身を緊張さした。両の拳を握り固めて、無念流の棄て構え……といった恰好に身構えたが、白い布片をくったら、虚空を掴んで死にかけている人間の恰好に似ていたろう。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
シャれ声をしぼって駈けまわっていたが、そのうちに、一ヵ所の陣幕のすそが、烈風にふきあおられてぱッとくられた刹那、チラと、その中にいた赤地錦の鎧直垂よろいひたたれと八龍の兜との人影を
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尊氏の眉も唇も稲妻いなずまのように引ッつれた。だが、膝の関節がささえきれずにその体を先にくずしてしまっている。そしてふるえる手がもう意志でもなく夜具のえりくっていた。下に、顔があった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると隣の干鰯船ほしかぶねから、仲間の八が、とまくって
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
槍で、それをくった男が
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)