はぎ)” の例文
屠殺場の皮はぎのようなえぐい顔をした私服の憲兵がブラリとクラブへやってきて、もっともらしい顔で花壇の間を歩きまわっていたが
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
巡査はわたくしの上着をはぎ取って所持品を改める段になると、平素ふだん夜行の際、不審尋問に遇う時の用心に、印鑑と印鑑証明書と戸籍抄本とが嚢中のうちゅうに入れてある。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その時、尼うらんで永劫えいごうここの男が妻に先立って若死するようとのろうて絶命した。そこを比丘尼はぎという。その後果して竜神の家つねに夫は早世し、後家世帯が通例となる。
「そう簡単には行かん。俺が欲しくなれば、お前から貰うのは厭だから力ずくではぎ取るよ」
(新字新仮名) / 梅崎春生(著)
詮議せんぎするぞ有樣にぬかせばよし若し此上にも取隱とりかくさば憂目うきめを見せんと云へども知ぬとばかりゆゑ立花左仲は立掛たちがゝりお島を引立ひきたてには連行つれゆき衣類いるゐはぎゆきこほりし松の木にしばつけ割竹わりたけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自分の思想が元来くだらない未熟な借物であって、それが、父の素朴な信仰と対置されて其の末梢的まっしょうてきな装飾部分をはぎられる時、その本当の姿を現すのだろうか? 其の頃スティヴンスンは
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)