わかち)” の例文
然し活動写真は老弱ろうにゃくわかちなく、今の人の喜んでこれを見て、日常の話柄わへいにしているものであるから、せめてわたくしも
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
行く水に数画かずかくよりもはかなき恋しさと可懐なつかしさとの朝夕に、なほ夜昼のわかちも無く、絶えぬ思はその外ならざりし四年よとせの久きを、熱海の月はおぼろなりしかど、一期いちごの涙に宿りし面影は
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
くばりて所々尋ね廻りしが頃は三月十五日梅若祭うめわかまつりとて貴賤きせん老若のわかちなく向島のにぎはひ大方ならず然るに此日は友次郎腹痛ふくつう故忠八一人向島へゆきて隅田川のつゝみを彼方此方と往來の人に心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一 女子は稚時いとけなきときより男女のわかちを正くして仮初かりそめにも戯れたることをきかしむべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
嗚呼我人とも終には如是かく、男女美醜のわかちも無く同じ色にと霜枯れんに、何の翡翠の髪のさま、花の笑ひのかんばせか有らん。まして夢を彩る五欲の歓楽たのしみ、幻を織る四季の遊娯あそび、いづれか虚妄いつはりならざらん。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)