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出拂
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ではら
今夜ほどは
女房役をせうわい。……(奧に向ひて)こりゃ、
誰れかゐぬか!……
皆出拂うてしまうた。むゝ、
自身でパリスどのゝ
邸へ
往て、
明朝の
準備をさせて
來う。
「
出拂つた……
然うか。……
餘程あるかい。」
出づる
大黒傘の
上に
雪つもるといふ
間もなきばかり
速かに
立歸りて
出入の
車宿名殘なく
出拂ひて
挽子一人も
居ませねばお
氣の
毒さまながらと
女房が
口上其まゝの
返り
事に
然らば
何とせんお
宅にお
案じはあるまじきに
明早朝の
御歸館となされよなど
親切に
止められるれど
左樣もならず