旧字:出會
こういう場面によく出会すらしい藤枝も、ひろ子を慰めるのにはちよつと困つたとみえ、しばらく、ばつのわるいような沈黙がつづいた。
そして自分が今何か大きな運命的なものの前で、ぽつんと立つてゐるやうな不安と、新しいことに出会すに違ひないといふ興味とを覚えた。
それに思わぬ事件や、思わぬ人物に出会して、何かの意味でそれをあしらうことが、なかなか修行になるものだと心得ている。
しかも、その青木と不用意に、銀座通りで出会すなどということは、彼の予想すべき最後のことであった。彼は狼狽してはならないと思った。
「野郎、覚えておくがええぞ、一度でも出会したなら、貴様の首ねっこはもうねえと思うんだぞ、やい、この半兵衛野郎!」