其方そのかた)” の例文
若子さんは可怖い物見たさと云った様な風をなすって、口も利かないで、其方そのかたを見て居らしッたのでした。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
ひとふなり温順おとなしう嫁入よめいつてわたしを、自然しぜん此樣こんうんこしらへていて、盲者めくらたにつきおとすやうなことあそばす、神樣かみさまといふのですかなんですか、其方そのかたじつうらめしい
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其方そのかたさしてあゆむ人はみな大尉たいゐかうを送るの人なるべし、両国橋りやうごくばしにさしかゝりしは午前七時三十分、や橋の北側きたがは人垣ひとがきたちつどひ、川上かはかみはるかに見やりて、みどりかすむ筑波つくばの山も
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
君是れ程筋が立つて居るのに、し兼吉を無罪にすることが出来ないならば、弁護士をめて仕舞へと、先生様がおつしやるぢやないか、すると其方そのかたもネ、よろしい約束しようとおつしやるんだよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
妙なのね、そんなにいやがるのは。——いやなんぢやないつて、くちではおつしやるけれども、もらはなければ、いやなのとおんなしぢやありませんか。それぢやだれきなのがあるんでせう。其方そのかたの名をおつしやい
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)