偃月刀えんげつとう)” の例文
そのまっ先に進んでくるのはまぎれもなし、青龍の偃月刀えんげつとうをひっさげ、駿足赤兎馬せきとばに踏みまたがって来る美髯びぜん将軍——関羽であった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時は、北方から剽悍ひょうかんな遊牧民ウグリ族の一隊が、馬上に偃月刀えんげつとうりかざして疾風しっぷうのごとくにこの部落をおそうて来た。湖上の民は必死になってふせいだ。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
オンコッコは力をこめてジョン少年の胸の辺を偃月刀えんげつとうで突き刺そうとした。とにわかに手が麻痺しびれた。
気が狂ったようになり、揺れているその偃月刀えんげつとうの方へ向って自分の体を上げようともがいた。
落穴と振子 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
体長はゆうに五十フィート以上あり、立上ったその頭は、三十フィートもある宇留陀木ウルタニアの頂からまだ上に出ていた。前肢には宮守やもりのようなみずかきがあり、後肢には偃月刀えんげつとうのような鋭い爪があった。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
早速、近郷の鍛冶工かじこうをよんできて、張飛は、一丈何尺という蛇矛じゃぼこってくれと注文し、関羽は重さ何十斤という偃月刀えんげつとうきたえさせた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで吃驚びっくりしてお月様の眼が、潰れてしまったのでございます。……誰が刳ったのでございましょう? 青々と光るものがある! 鉛で作った大形の、偃月刀えんげつとうでございます。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
関羽の愛馬は世にも名高い駿足赤兎せきとである。孫権は、馬忠にそれを与え、また潘璋にはこれも関羽の遺物かたみとなった青龍の偃月刀えんげつとうを与えた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土耳古トルコ製らしい偃月刀えんげつとうや、亜剌比亜人の巻くターバンのきれや、中身のなくなっている酒の瓶や、刺繍した靴や木彫りの面や、紅、青、紫の宝玉類を、異様に美々しく装飾し
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「冗談じゃない。百斤なんて錫杖は人間の持ち物にゃありませんぜ。三国時代の豪傑関羽かんうさまの偃月刀えんげつとうだって八十一斤でさ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おどしの糸のやや古びた、源平時代の鎧甲よろいかぶと、宝石をちりばめた印度風インドふうの太刀、磨ぎ澄ました偃月刀えんげつとう、南洋産らしい鸚鵡おうむの剥製、どこかの国の国王が、冠っていたらしい黄金の冠、黒檀の机、紫檀の台
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
青龍の偃月刀えんげつとうを掻いよせて立つと、二夫人は外門のほとりまで送ってでた。関羽は赤兎馬せきとばに打ちまたがって、一路、白馬の野へ急いで行った。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
胸まである黒髯こくぜんを春風になぶらせ、腰に偃月刀えんげつとう佩環はいかん戛々かつかつとひびかせながら、手には緋総ひぶさのついた鯨鞭げいべんを持った偉丈夫が、その鞭を上げつつ近づいてくるのであった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここには呂蒙と甘寧かんねいとが、大兵を伏せて、関羽を討ち漏らさじと鉄桶の構えを備えていたのであるが、関羽の右手に、見る眼もくらむばかりな大反おおぞり偃月刀えんげつとうが持たれていることと
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虚空に鳴る偃月刀えんげつとうの一、血けむり呼んで、人馬ともに、関羽のほうむるところとなった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旋風つむじかぜのなかに龐徳の得物と関羽の打ち振る偃月刀えんげつとうとが閃々と光のたすきを交わしている。両雄の阿呍あうんばかりでなくその馬と馬とも相闘う如く、いななき合い躍り合い、いつ勝負がつくとも見えなかった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かねての覚悟、関羽は偃月刀えんげつとうを馬上に持ち直して
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、はや小脇の偃月刀えんげつとうを持ち直して身がまえた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)