なり)” の例文
旧字:
「敏子、いけませんよ、大きななりをして相手になって。浩二もお黙りなさい。千代子ちよこを御覧。おとなしいこと」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なぜなら、今そうやってひざまずいたなりは、神に対し、仏に対して、ものを打念うちねんずる時の姿勢であると思ったから。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭が大きくなりが小さくて、子供のような格好の彼だ。裾をたくし上げて脛を出して、その脛を雑草の露に濡らして、月の光に生白く光らせ、家の群れのほうへ走って行く。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
三町ばかり先へ落雷でガラ/\/\/\/\ビューと火の棒の様なる物がさがると、丁度浄禅寺じょうぜんじヶ淵辺りへピシーリと落雷、其のひゞきに驚いて、土手の甚藏は、なり大兵だいひょうで度胸もい男だが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「また子供のように泣いたりうなったりしちゃいけませんよ。大きななりをして」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七兵衛も進んで主人の急を救おうとすると、最初はじめの小さい男が這って来て七兵衛の足をすくった。彼は倒れながらに敵の腕を取って、一旦は膝下しっか捻伏ねじふせたが、なりに似合わぬ強い奴でたちまち又跳返はねかえした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「やあ、馬鹿々々。何だ、そんななりで、引込ひっこまねえか、こら、引込まんか。」
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
看護婦はなりさい血色の好くない女であった。しかし年頃はどうしても津田に鑑定のつかない妙な顔をしていた。いつでも白い服を着けているのが、なおさら彼女を普通の女のむれから遠ざけた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)