住人すみて)” の例文
教師けうしそのあとで、嬰兒あかご夜泣よなきをしてへられないといふことでぢき餘所よそした。幾度いくど住人すみてかはつて、今度こんどのはひさしくんでるさうである。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あの時はたたりがあるの、お化けが出るのと言って誰も住人すみての無かったものが、今は立派に人が住んでいるらしくあります。
今は一人の住人すみてもなく、立ち腐れのように立っている家——三軒の家がいろいろの怪談や、さまざまの恐ろしい噂を持って、今に残っているばかりであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
場処も小石川こいしかはの植物園にちかく物静なれば、少しの不便をきずにして他には申むねのなき貸家ありけり、かどの柱に札をはりしより大凡おほよそ三月ごしにも成けれど、いまだに住人すみてのさだまらで
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
住人すみては素より何一つ遺っていず、綺麗に掃除してあったとのこと。
昨日まで一人の住人すみてのなかった、ほとんど壊れた猪小屋が——猟師が鳥獣を待ち射つため、荒々しく作った三間ばかりの小屋が、寂しく立っていた筈であった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
場處ばしよ小石川こいしかは植物園しよくぶつゑんにちかく物靜ものしづかなれば、すこしの不便ふべんきずにしてほかにはまをむねのなき貸家かしやありけり、かどはしらふだをはりしより大凡おほよそ三月みつきごしにもなりけれど、いまだに住人すみてのさだまらで
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
少しの不便をきずにして他には申むねのなき貸家ありけり、門の柱に札をはりしより大凡おほよそ三月ごしにも成けれど、いまだに住人すみてのさだまらで、主なき門の柳のいと、空しくなびくも淋しかりき
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)