やすら)” の例文
乞としばしえんもとやすらひぬ餠屋もちやの店には亭主ていしゆと思しき男の居たりしかば寶澤其男にむかひ申けるは私しは腹痛ふくつう致し甚だ難澁なんじふ致せばくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そが出立ちし處なるアンタンドロとシモエンタ、またかのエットレのやすらふところを再び見、後、身をふるはして禍ひをトロメオに與へ 六七—六九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こけを被ぶりたる大石乱立らんりつしたる間を、水は潜りぬけて流れおつ。足いと長き蜘蛛くも、ぬれたるいわおの間をわたれり、日暮るる頃まで岩にこしかけてやすらい、携えたりし文など読む。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私の眼には、——その人々を見るとたちまち私のうちに湧き上ってきた、なんとも言えない親愛の情、なごやかな心のやすらい、それらのもたらした感動がありありと光っていたに違いないのである。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
でてはさすがにつかれて日暮に帰り来にける貫一は、彼の常として、吾家わがいへながら人気無き居間の内を、旅の木蔭にもやすらへる想しつつ、やや興冷めて坐りもらず、物の悲きゆふべことひとりの感じゐれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)