仲好なかよし)” の例文
「私の仲好なかよしなの、でも役雑やくざなんです。先刻さっき来た時きっとまた威張ってぞんざいな口でも利いたんでしょう、それでまりが悪いんだよ。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「葉子さん」そう言ってあとから葉子の肩を軽くたたいた。それは葉子と仲好なかよし朝子あさこであった。朝子は葉子の顔をのぞきこんで「どうしたの」ときいた。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
うちで案じるといけないから、ちょいとお母さんにあかして仲好なかよしに成りてえと仰しゃるから、お連れ申して来ましたんで
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何時の間にか私はこの老学士と仲好なかよしに成って自分の身内からでも聞くように、そのおさえきれないような嘆息や、内に憤る声までも聞くように成った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
婆あさんは純一に、少女が中沢という銀行頭取の娘で、近所の別荘にいるということ、娵の安がもと別荘で小間使をしていて娘と仲好なかよしだということを話した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
白と黒は大の仲好なかよしになって、始終共に遊んだ。ある日近所の与右衛門よえもんさんが、一盃機嫌で談判だんぱんに来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私はこのKと小供こどもの時からの仲好なかよしでした。小供の時からといえば断らないでも解っているでしょう、二人には同郷の縁故があったのです。Kは真宗しんしゅうの坊さんの子でした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二人はこの船に一緒に乗組んでから、まだ一航海をしたつきりなのに、非常に仲好なかよしになつて、互に仕事を助け合つたり、相談したり、将来の希望を語り合つたりするのだつた。
怪艦ウルフ号 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
ところが源三と小学からの仲好なかよし朋友ともだちであったお浪の母は、源三の亡くなった叔母と姉妹きょうだい同様の交情なかであったので、が親かったもののおいでしかも我が娘の仲好しである源三が
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と事なく済みましたが、多助はちいさい内から仲好なかよしの友達のことゆえ、さえあれば圓次の墓所はかしょへまいり、墓掃除をいたし、香花こうげを毎日手向けてやって居りました。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其の中に吉見屋よしみやという宿に泊りましたが、道連は堺屋傳吉さかいやでんきちという岸田屋の宇之助と旅商人たびあきんど仲間で、両人ふたり仲好なかよしでございますから、両人はこれから沼田へ山越しをしようと云うので、道で聞きますと
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)