事件ことがら)” の例文
「火事だ?」と口々に尋ねたが、これは事件ことがら緒口いとぐちを引出そうとするに過ぎない、皆々は云うまでもなく、その間の消息を解していた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
信吾去り、志郎去り、智恵子去り、吉野去つて、夏二月の間に起つた種々いろいろ事件ことがらが、一先ひとま結末をはりを告げた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
こたゆべしと申さるれども長庵は空嘯そらうそぶき一旦御吟味濟に相成たる事件ことがら再應さいおうの御調べなほしは何とやらん御奉行所の御裁許はふたあるやうに存じ奉つると公儀こうぎの裁判所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それほど、なかには、あざらしばかりでなく、子供こどもをなくしたり、さらわれたり、ころされたり、そのようなかなしい事件ことがらが、そこここにあって、一つ一つおぼえてはいられなかったからでした。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
すきこそ物の上手じやうずなれとたとへの通り飽迄あくまで公事向くじむきに手なれし長助が思ひ通りの訴状御取上に成りしかばお光のよろこび一方ならず然るに三四日過て御呼出よびだしに相成越前守殿願ひ人お光清右衞門長助の三人へ申渡されけるは此訴訟のおもむきにては先年同役たる中山出雲守の係りにて裁許さいきよ相濟あひすみたる事件ことがら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つけられしかども一旦中山殿奉行所にて裁許さいきよの有りし事件ことがらなれば何と無く斟酌しんしやく有て暫時しばらくかんがへ居られしが又猶申さるゝは其折道十郎なる者吟味づめに相成りしわけには之なく牢死らうししたる故其儘に成りをりしなり存生ぞんしやうならば外に吟味の致し方も有りしならんしかるに只今の一言奉行所の不行屆ふゆきとゞきの樣に上の御政度せいど
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)