中風ちゅうぶ)” の例文
「巧く仰有るが、実はソロ/\焼が廻って来たんじゃありますまいか? 眩暈がして足がフラ/\するところは中風ちゅうぶのようですよ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「おるが、この頃は、中風ちゅうぶで剣術どころでねえでの。片手にくわ、片手に鎌で、箸を持つ手は、百姓にはねえだ。何んせい、こッぴどい運上やら、助郷やら」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
プシキンはさきだって非常ひじょう苦痛くつうかんじ、不幸ふこうなるハイネは数年間すうねんかん中風ちゅうぶかかってしていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
私はこの出版の申込みを受けて間もなく中風ちゅうぶに倒れて入院し、年余の横臥生活を送っている。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
おふくろは中風ちゅうぶという病で、立居が自由にならぬ、あとはみんな女ばかりだから、バカにしていたずらのしたいだけをして、日を送った。兄貴は別宅していたから何も知らなんだ。
中風ちゅうぶでお悩みなすってから、動くことも出来なくおなりで、うちは広し、四方は明地あきちで、穴のような処に住んでたもんだから、火事なんぞの心配はないのだけれど、盗賊どろぼうにでも入られたら
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小室君こむろくんは養父の紹介だから、何とかなるだろうと思って出掛けた。養父は中風ちゅうぶで、もう廃人だけれど、月二百円以上の恩給をんでいる。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
反対に、半田屋の主は数年前に中風ちゅうぶたおれる、家産は傾いて、昔は店の雇人だった彦兵衛から高利を借りて、やっとここ一両年を支えて来たというような始末。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなことはい、たとえば御覧ごらんなさい、貴方あなた中風ちゅうぶにでもかかったとか、あるいかり愚者ぐしゃ自分じぶん位置いち利用りようして貴方あなた公然こうぜんはずかしめていて、それがのちなんむくいしにんでしまったのをったならば
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
錺太夫の方は師匠の同輩が中風ちゅうぶになったものだから、その弟子を引受けたのである。これも銀さんより若いけれど、芸は先輩だ。もう高座を勤めている。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
母も、大きゅうなった殿様のおすがたが見たいと、朝夕に云い暮しておりますが、中風ちゅうぶを病んでからは、歩むこともかないませぬので、私が代りに参りました。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
重役連中は血圧が高いから中風ちゅうぶになって勤まらない人も出て来る。我輩は自分の努力で出世したように思っているが、上の人達が順々に死んで今の地位へ引き上げてくれたようなものさ
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
母は、中風ちゅうぶで、いつも寝ていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)