中門ちゆうもん)” の例文
と云ひながらその人は又自分達を中門ちゆうもんの中まで案内して置いて母家おもやの窓の下へ寄つて夫人に声を掛けた。自分はこんな事をも面白くもゆかしくも思つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あの法隆寺ほうりゆうじ金堂こんどう五重ごじゆうとう中門ちゆうもんなどが一番いちばんふるいもので、千何百年せんなんびやくねんながいあひだ木造もくぞう建築けんちくがそのまゝつたはつてゐるといふことは、世界せかいにもあまれいのないことです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
燒け殘りたる築垣ついがきの蔭より、屋方やかたの跡をながむれば、朱塗しゆぬり中門ちゆうもんのみ半殘なかばのこりて、かどもる人もなし。嗚呼あゝ被官ひくわん郎黨らうたう日頃ひごろちように誇り恩をほしいまゝにせる者、そも幾百千人の多きぞや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ゆふ早き庫裏くりのはひりは日たむろと築地ついぢめぐらしてあか中門ちゆうもん
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
牧場まきばにある様な粗末な木戸を押してはひると中門ちゆうもんの前まで真直まつすぐに一ちやう程細いみちの両側に繁つたマロニエの木立こだちが続く。その木蔭の涼しいので生き返つた心地がした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
中門ちゆうもん突当つきあたつて右に簡略な亜鉛葺とたんぶきの木造の小屋があつて、のぞくと中央に作り掛けた大きなさく像が据ゑられて居る。あとで聞けば倫敦ロンドンから依頼された画家ウイツスラアの記念モニウマンさうだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)