中入なかいり)” の例文
佐久間玄蕃さくまげんば中入なかいり懈怠けたいのためか、柴田勝家しばたかついへしづたけ合戰かつせんやぶれて、城中じやうちう一息ひといき湯漬ゆづけ所望しよまうして、悄然せうぜんきたさうへとちてく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
翁が能静氏の門下で修業中、名曲「とおる」の中入なかいり後、老人の汐汲しおくみの一段で「東からげの潮衣——オ」という引節ひきふしの中で汐を汲み上げる呼吸がどうしても出来なかった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
中入なかいりになると、菓子を箱入のまま茶を売る男が客の間へ配って歩くのがこの席の習慣になっていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのゆうべ中入なかいりも早や過ぎし頃ふとわれは聴衆の中にわが身と同じく黄いろき顔したる人あるを見しが、その人もまたわれを見て互に隔たりし席よりいぶかしげに顔を見合せたり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
彼は先の程より台所につめきりて、中入なかいりの食物の指図さしづなどしてゐたるなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
中入なかいりが済んだ頃、その時代にまだ珍らしかった、パナマ帽を目深にかぶった、湯帷子掛ゆかたがけの男に連れられて、背後うしろの二階へ来て、手摩につかまって据わりしなに、下の客を見卸した、銀杏返しの女を
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
中入なかいりです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目立たないように一銚子ひとちょうし附いて出ると、見ただけでも一口めそう……梅次の幕を正面へ、仲の町が夜の舞台で、楽屋の中入なかいりといった様子で、下戸げこまでもつい一口る。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中入なかいりとき宗助そうすけ御米およね
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)