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めづかひ
満枝はさすが
過を悔いたる
風情にて、やをら左の
袂を
膝に
掻載せ、
牡丹の
莟の如く
揃へる
紅絹裏の
振を
弄りつつ、彼の
咎を
懼るる
目遣してゐたり。
安井自身もそんな
心持がすると
云つて、わざ/\
襯衣の
袖を
捲り
上げて、
青筋の
入つた
腕を
獨で
撫でてゐた。
御米も
嬉しさうに
眼を
輝かした。
宗助にはその
活溌な
目遣が
殊に
珍らしく
受取れた。
代助は是を
黒眼の働らきと判断してゐた。
三千代が細君にならない前、代助はよく、
三千代の
斯う云ふ
眼遣を見た。さうして今でも
善く覚えてゐる。
と無意味な
眼遣で
妻の顏を見てニヤリとする。