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ひやうご
見て吉兵衞は杢右衞門に向ひ
兵庫の
沖を今日
出帆せんは如何といふ杢右衞門は
最早三が日の
規式も
相濟殊に
長閑なる
空なれば
御道理なりとて
水差を
駒形に屋敷を持つて居る、旗本大村
兵庫。
見て
水主等に此處は
何所の
沖なるやと尋けるに水主等は
確とは分らねど
多分は
兵庫の
沖なるべしと答けるにぞ
杢右衞門は吉兵衞に
向番頭樣
貴所の御運の
能ゆゑに
僅た二日二夜で
數百
里の
海路を
其内小六の
噂が
出た。
主人は
此青年に
就いて、
肉身の
兄が
見逃す
樣な
新らしい
觀察を、二三
有つてゐた。
宗助は
主人の
評語を、
當ると
當らないとに
論なく、
面白く
聞いた。
「
實際珍らしい
男です」と
主人も
評語を
添えた。