つひ)” の例文
つまり河流かりゆう上汐あげしほとが河口かこう暫時ざんじたゝかつて、つひ上汐あげしほかちめ、海水かいすいかべきづきながらそれが上流じようりゆうむかつていきほひよく進行しんこうするのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すると両方へどこからともなく他の悪魔が来て、加勢するものですから、その喧嘩が愈々いよいよ大きくなり、つひに戦争になつてしまひました。
悪魔の尾 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
ひとりや(六二)猜忍さいにん人也ひとなり其少そのわかときいへ、千きんかさねしが、(六三)游仕いうしげず、つひ其家そのいへやぶる。(六四)郷黨きやうたうこれわらふ。
そらを仰ぎ、地をたたきて哭悲なきかなしみ、九三ともにもと物狂はしきを、さまざまといひなぐさめて、かくてはとてつひ九四曠野あらのけぶりとなしはてぬ。
きよそれからすぐきた。三十ぷんほどつて御米およねきた。また三十ぷんほどつて宗助そうすけつひきた。平常いつも時分じぶん御米およねつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さういふ伴侶なかまことをんな人目ひとめすくな黄昏たそがれ小徑こみちにつやゝかな青物あをものるとつひした料簡れうけんからそれを拗切ちぎつて前垂まへだれかくしてることがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おなとき賈雍將軍かようしやうぐん蒼梧さうごひと豫章よしやう太守たいしゆとしてくにさかひで、夷賊いぞくあだするをたうじてたゝかひたず。つひ蠻軍ばんぐんのためにころされかうべうばはる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、そうつと障子しやうじの蔭から彼をばのぞいた。彼は笑顔でおいで/\をしたが子供はつひに奥の方の母親のひざもとへ逃げて行つてしまつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
下等船客かとうせんきやくいち支那人シナじんはまだ伊太利イタリー領海りやうかいはなれぬ、ころよりくるしきやまひおかされてつひにカンデイアじまとセリゴじまとのあひだ死亡しぼうしたため
渡れば喜十六の山麓さんろくにて、十町ばかり登りて須巻すまきたきの湯有りと教へらるるままに、つひ其処そこまで往きて、ひる近き頃宿に帰りぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
仰付らるゝにより迅速すみやか正路しやうろの人になるべきはずなれども又人間に出る時は以前いぜんに一そう惡事の効をつみつひには其身をうしなひ惡名を萬世に流すを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひとこゝろ宿やどところこひをすらわらふべくしんずべからざるものならば、人生じんせいつひなんあたひぞ、ひとこゝろほど嘘僞きよぎものいではないか。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「生けるものつひにも死ぬるものにあれば」(巻三・三四九)、「すゑつひに君にあはずは」(巻十三・三二五〇)等の例がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
老人越遊ゑついうすゝめしこと年々なり。もとより山水にふけるへきあり、ゆゑに遊心いうしんぼつ々たれども事にまぎれはたさず。丁酉の晩夏ばんかつひ豚児せがれ京水をしたがへ啓行けいかうす。
その頃料らずも外山正一氏の畫論を讀みて、わがいだけるところに衝突せるを覺え、つひ技癢ぎやうにえへずして反駁はんばくの文を草しつ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それかられがたゝりはしないか/\といふ気病きやみで、いまいふ神経病しんけいびやうとかなんとかふのだらうが、二代目はそれを気病きやみにしてつひちがつた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
遠くのさわうた富貴ふうき羨望せんばう、生存の快楽、境遇きやうぐうの絶望、機会と運命、誘惑、殺人。波瀾はらんの上にも脚色きやくしよく波瀾はらんきはめて、つひに演劇の一幕ひとまくが終る。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
老人越遊ゑついうすゝめしこと年々なり。もとより山水にふけるへきあり、ゆゑに遊心いうしんぼつ々たれども事にまぎれはたさず。丁酉の晩夏ばんかつひ豚児せがれ京水をしたがへ啓行けいかうす。
貞盛方の佗田真樹は戦死し、将門方の文屋好立ぶんやのよしたつは負傷したが助かつた。貞盛はからくものがれて、つひに京にいたり、将門暴威を振ふの始終を申立てた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
と云へる有様の歴々あり/\と目前に現はれ、しかもせふの位置に立ちて、の言葉を口にしようし、りようをしてつひ辟易へきえきせしめぬ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
爵位の如き、娯楽の如き、学芸文事こと/″\く一たびは彼を迷はせしことあれども、つひに彼を奴僕となせるものあらざりき。
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
からだはエレベーターのやうに、地下ちか地下ちかへと降下かうかしてゆくやうな氣持きもちだつた。そしてつひ彼女かのぢよ意識いしきうしなつてしまつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
それを、ひとびとはつひに見ることが出来なくなつた。かつて大崎八段と対局した時、いきなり角頭の歩を突くといふ奇想天外の手を指したことがある。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
すくなくとも日本建築にほんけんちく古來こらい地震ぢしん考慮かうりよなかくはへ、材料ざいれう構造こうさう工風くふうらし、つひ特殊とくしゆ耐震的樣式手法たいしんてきやうしきしゆはふ大成たいせいしたと推測すゐそくするひとすくなくないやうである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
つひには中央ちゆうおうヨーロッパからきたヨーロッパにだん/″\ひろがつてつたといふことだけはたしかにわかるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
わづか收入しうにふはゝ給養きふやうにもきようせねばならず、かれつひ生活せいくわつにはれず、斷然だんぜん大學だいがくつて、古郷こきやうかへつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
(前略)……もとより創業費とて不充分なりし事故ことゆゑ如何いかんとも進退出来ざるやうになり、昨年極末ごくまつつひに七百弗足らずの負債を背負ひ農業の方手を引き候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
奧羽地方おううちほうではさらくだつて四千七百尺しせんしちひやくしやくから三千五百尺さんぜんごひやくしやくたかさまでになり、北海道ほつかいどう南部なんぶでは一千五百尺いつせんごひやくしやくくだり、その中央ちゆうおうではつひ海水面かいすいめん一致いつちしてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
も一朝一夕のゆゑに非らずサ、つひ石心木腸せきしんもくちやうなる井上与重の如きをして、物や思ふと問はしむる迄に至つたのだ、僕の如きはとくの昔から彼女をして義人を得
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
かくごときのもろもろ悪業あくごふ、挙げて数ふるなし。悪業を以ての故に、更に又諸の悪業を作る。継起してつひをはることなし。昼は則ち日光をおそれ又人および諸の強鳥を恐る。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
或る日の縁側えんがはすわらせた學校友たちの一人をうつしてみたかん板につひにうつすりとそれらしい影像えいぞうあらはれた。
なほらざるとき全身ぜんしん冷水れいすゐそゝぎてそのいたみまつたりしゆゑに、其後そのご頭痛づつうおこごと全身ぜんしん冷水灌漑れいすゐくわんがいおこなひしが、つひ習慣しふくわんとなり、寒中かんちゆうにも冷水灌漑れいすゐくわんがいゆるをたり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
種々に空想をたくましうしたが、未だ其人をさへ見た事の無い身の、完全にそれを断定することが何うして出来よう。つひに思切つて、そして帰宅すべく家路に就いた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
まる咽喉のどほねでもつかへてゐるやうだ』とつてグリフォンは、其背中そのせなかゆすつたりいたりしはじめました。つひ海龜うみがめこゑなほりましたが、なみだほゝつたはつて——
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
白猿はくゑん余光よくわう抱一はういつ不白ふはくなどのもとへも立入たちいるやうになり、香茶かうちや活花いけばなまで器用であはせ、つひ此人このひとたちの引立ひきたてにて茶道具屋ちやだうぐやとまでなり、口前くちまへひとつで諸家しよけ可愛かあいがられ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
書紀にも「いくさやしなひ衆をつどへて、つひともに謀を定めたまふ」と壬申の乱における内助の功をたたえ、また大海人皇子登位して天武天皇となられて後、崩御さるるまで
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
渠が其地位に対する不安を抱き始めたのはつひ此頃の事で、以前もと郵便局に監視人とかを務めたといふ、主筆と同国生れの長野が、編輯助手として入つた日からであつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
直ちにくまいたきて相角しつひに之をころすなり、熊人をのがれんとするときも亦然すと云ふ、此回の探検中たんけんちうくまひし事なし、之れ夏間は人家ちかやまに出でてしよく
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
「恰で包圍攻撃ほういこうげきを喰つてゐるんだ!」と嗟嘆さたんして、此うしてゐては、つひ自滅じめつまぬかれぬと思ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
昨日きのふけふとは思はざりしを」とのこの句はちょっと不意打ふいうちをせられて、あわてたようにも聞こゆるけれども、もし彼にして「つひに行く道」をかねて聞いておらなかったならば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この恨み、はたさるべき日はつひきたりぬ。こぞの秋、われ思はずも病にかゝりて東海のほとりにさすらひ、こゝに身を清見潟の山水に寄せて、晴夜せいやの鐘に多年のおもひをのべむとす。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
しかし光のもやに似た流は、少しもその速力をゆるめない。反つて目まぐるしい飛躍の中に、あらゆるものを溺らせながら、澎湃はうはいとして彼を襲つて来る。彼はつひに全くそのとりこになつた。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
酔えばただ大きな声をして饒舌るばかり、つひぞ人の気になるようないやがるような根性の悪いことをいって喧嘩をしたこともなければ、上戸じょうご本性真面目まじめになって議論したこともないから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は又しても彼れのはげしい羞恥心を読む事が出来たので、非常な悔いを感じつつ、つひに椅子から立ち上つた——説明するまでもない、私は「悪い場所へ来合せて了つた」と云ふ意識で
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
どうしても惣兵衛ちやんがいふことをきかないと、つひにお母さんは許してくれた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そのあひだ相變あひかはらずたけつては、黄金おうごんれましたので、つひにはたいした身代しんだいになつて、家屋敷いへやしきおほきくかまへ、使つかひなどもたくさんいて、世間せけんからもうやまはれるようになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
つひに私は無我夢中に逆上して、家へ出入りするお常婆を介して、正式に許嫁いひなづけの間にして貰へるやう私の父母に当つて見てくれと頼んだ。一方私はにはかに気を配つて父や母を大切にし出した。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「何だと! 出て行け! なぜ出て行かぬ」わしもつひに大きな声を出した。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
わたし此後このゝちあるひ光子みつこ離縁りえんするかもはかられぬ。次第しだいつては、光子みつこ父母ちゝはゝに、此事このこと告白こくはくせぬともかぎらぬ。が、告白こくはくしたところで、離縁りえんをしたところで、光子みつこたいする嫉妬しつとほのほは、つひすことが出来できぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
こんな關係で、つひに恐ろしい事件にまで發展してしまつたのです。