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鼓草
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たんぽゝ
美女は、やゝ
俯向いて、
其の
駒を
熟と
視める
風情の、
黒髪に
唯一輪、……
白い
鼓草をさして
居た。
此の
色の
花は、
一谷に
他には
無かつた。
トなだらかな、
薄紫の
崖なりに、
桜の
影を
霞の
被衣、ふうわり
背中から
裳へ
落して、
鼓草と
菫の
敷満ちた
巌を
前に、
其の
美女が
居たのである。
と
美女は
又算へて、
鼓草の
駒を
取つて、
格子の
中へ、……
菫の
花の
色を
分けて、
静に
置替へながら、
莞爾と
微笑む。……