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黒暗々
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こくあん/\
吾等の
叫聲は
忽ち
怒濤の
響に
打消されてしまつたが、
只見る、
黒暗々たる
遙か/\の
沖に
當つて、
一點の
燈光ピカリ/\。
今はそれさへ
天涯の
彼方に
落ちて、
見渡す
限り
黒暗々たる
海の
面、たゞ
密雲の
絶間を
洩れたる
星の
光の一二
點が
覺束なくも
浪に
反射して
居るのみである。
今、
私は
黒暗々たる
印度洋の
眞中に
於て、わが
弦月丸の
後を
追ふかの
奇怪なる
船を
見てふと
此樣事を
想ひ
出した。