高値たか)” の例文
……航路かうろも、おなじやうに難儀なんぎであつた。もしこれをりくにしようか。約六十里やくろくじふりあまつてとほい。肝心かんじんことは、路銀ろぎん高値たかい。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
死しても皮を留むなる、獣の皮は幾十倍、高値たかく売れても、人といふ、その価の下がるが気の毒と。世間の評判朝夕に、一郎が耳にも伝はれど。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
だから、輪王寺の寺侍の株は、ふつうの御家人株の売買よりも、はるかに高値たかい。また、滅多に、売り物は出ない。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白痴こけなことこくなてえば。二両二貫が何高値たかいべ。われたちが骨節ほねっぷしかせぐようには造ってねえのか。親方には半文の借りもした覚えはねえからな、俺らその公事くじには乗んねえだ。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
要するに「手作りハンド・メイド」だから高値たかい、そして高値が故にのみ手が出るのである。
お米よりきやアお米の水の方が、いくら高値たかくつくか知れやアしない、よくもそれを自慢らしくいへたもんだ。お前は一食でも二食でも、それはお前の好きでするんだ。
磯馴松 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
銚子てうしいりわるくつて、しかも高値たかいとふので、かただけあつらへたほかには、まち酒屋さかやから
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
物が高値たかくなるばかり、法令はひどくやかましい。働き手は、戦いのたびに、軍夫にかり出される。喰えない。やりきれない。これがおまえ方のほんとうなすがただろう。もっともだ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帳面ちょうづらで見ると、高値たかい仕出しの料理や、贅沢な重箱物が、船宿や、妾宅や、ばくち場や、およそ享楽的な集合所へ、どんどん出ている。何が不景気で、どこがいくさだか、数字は、反対を示している。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
「米が高値たかいから不景気だ。媽々かかあめにまた叱られべいな。」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)