駈廻かけまわ)” の例文
あとには娘お町が有難いお人だと悦んで居りました。國藏は又しきりに心配して、ぐる/\駈廻かけまわって居りまする処へ文治郎が立帰たちかえって参り
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
幾ら気が張っていても、疲労つかれには勝たれぬ。市郎は昨夜雨中を駈廻かけまわった上に、終夜殆ど安眠しなかった。加之しかも今朝は朝飯も食わなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
晃 鐘も鳴らせん……処で、不知案内の村を駈廻かけまわって人を集めた、——サア、弥太兵衛の始末は着いたが、誰も承合うけあって鐘を撞こうと言わない。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父も此一件から急にを折って、彼方此方あちこちの親類を駈廻かけまわった結果、金の工面くめんが漸く出来て、最初はひどく行悩んだ私の遊学の願も、存外難なくゆるされて
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
空は高し、渡鳥、色鳥の鳴くは嬉しいが、田畑と言わず駈廻かけまわって、きゃっきゃっと飛騒ぐ、知行とりども人間の大声は騒がしい。まだ、それも鷹ばかりなら我慢もする。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といって天秤てんびんを肩へ当るも家名のけがれ外聞が見ッともくないというので、足を擂木すりこぎ駈廻かけまわッてからくして静岡藩の史生に住込み、ヤレうれしやと言ッたところが腰弁当の境界きょうがい
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
……沼は、と見れば、ここからは一面の琵琶びわを中空に据えたようで、あし葉摺はずれに、りんりんと鳴りそうながら、一条ひとすじ白銀しろがねの糸もかからず、暗々として漆して鼠が駈廻かけまわりそうである。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
台所を、どどんがたがた、鼠が荒野あれの駈廻かけまわる。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
霰は屋根を駈廻かけまわる。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)