馭者ぎよしや)” の例文
兎角とかく一押いちおし、と何處どこまでもついてくと、えんなのが莞爾につこりして、馭者ぎよしやにはらさず、眞白まつしろあを袖口そでくち、ひらりとまねいて莞爾につこりした。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夫人は「岸までは猶更なほさら遠い。少し待ちなさい、ロダンの馬車に馬を附けさせて送らせませう」と云つて馭者ぎよしやを呼んで命ぜられた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ゆうべ(七月十九日)は佐佐木茂索ささきもさく君と馬車に乗つて歩きながら、麦藁帽むぎわらばうをかぶつた馭者ぎよしや北京ペキンの物価などを尋ねてゐた。
鵠沼雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それからまたやたらむちで痩馬をひツぱたくがたくり馬車の馭者ぎよしやや、ボロ靴で泥を刎上はねあげて行く一隊の兵卒や、其の兵隊を誘致して行くえらさうな士官や
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
車掌と馭者ぎよしやとが、大聲で、急ぐようにとせき立てた。私のトランクは、積み上げられた。接吻をして縋りついてゐたベシーの首から、私は引き放された。
病院の中庭なかには驛傳えきでん馭者ぎよしや來り
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
馭者ぎよしやがひとことなにかいふ
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わかい馭者ぎよしや
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかし十九世紀のシヨウペンハウエルは馭者ぎよしやむちの音を気にしてゐる。更に又大昔のホメエロスなどは轣轆れきろくたる戦車の音か何かを気にしてゐたのに違ひない。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「教會へ行くにはらないが、歸つて來たら用意が出來てなくてはならない——箱も荷物もすつかり積み込んで、紐でくゝつて、馭者ぎよしやは馭者臺にゐるのだ。」
一体にブリユツセル市民は日本人に対し好感情を持つて居て、何かと自分達に便宜を与へてれる事が多かつた。辻馬車の馭者ぎよしや迄が特に親切であるのを感じた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
馭者ぎよしやは、休みなく馬をつた。さうして一時間半が、私には殆んど二時間位にのびたやうな氣がした。やつと彼はその席から振り返つて云つた。「もうソーンフィールドは大して遠くねえです。」