ひん)” の例文
体内に灯された処女の生命いのちが、一ひん、一笑、一挙手、一投足に、恐ろしいばかりの光明ひかりになって、その五体から発散するのです。
主人ははしとも楊枝ようじとも片のつかないもので、無雑作むぞうさに饅頭を割って、むしゃむしゃ食い始めた。宗助もひんならった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
名門豪戸競うて之を玩味がんみし給うとは雖も、その趣旨たるや、みだりに重宝珍器を羅列して豪奢を誇るのひんならわず、閑雅の草庵に席を設けて巧みに新古精粗の器物を交置し
不審庵 (新字新仮名) / 太宰治(著)
さいわいにして明治政府には専制の君主なく、政権は維新功臣いしんこうしんの手にりて、その主義とするところ、すべて文明国のひんならい、一切万事寛大かんだいを主として、この敵方の人物を擯斥ひんせきせざるのみか
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
主人しゆじんはしとも楊枝やうじともかたかないもので、無雜作むざふさ饅頭まんぢゆうつて、むしや/\はじめた。宗助そうすけひんならつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
貴婦人達は一切いっさい茶をのまずして茶話ちゃわ会の楽しみをも廃したとうことをきいた、れば吾々もこの度は米国人のひんならい、一切上圊じょうせいを廃して政府をこまらしてろうではないか、この発案の可否如何いかんとて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分も用心のため、すぐ彼の傍へ行ってひんならった。それから三人前後して濡れた石をみながら典座寮てんぞりょうと書いた懸札かけふだの眼につく庫裡くりから案内をうて座敷へ上った。
初秋の一日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)