頸筋くびすぢ)” の例文
ガラツ八は頸筋くびすぢを掻いたり、顏中をブルブルンと撫で廻したり、仕方澤山に探索の容易ならぬことを呑込ませようとするのです。
またそつとてゝとき頸筋くびすぢかみをこそつぱい一攫ひとつかみにされるやうにかんじた。おつぎはそと壁際かべぎは草刈籠くさかりかご脊負せおつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
頸筋くびすぢぶたこゑまでがそれらしい老人らうじん辨當べんたうをむしやつき、すこ上方辯かみがたべんぜた五十幾歳位いくさいぐらゐ老婦人らうふじんはすしを頬張ほゝばりはじめた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
教場で背後から何ほど鉛筆で頸筋くびすぢを突つつかれようと、靴先でかゝとられようと、眉毛一本動かさずまたゝき一つしなかつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
頸筋くびすぢ突疵つききずなど色々あれども、たしかに逃げる処を遣られたに相違ない、引かへて男は美事な切腹、蒲団ふとんやの時代からさのみの男と思はなんだがあれこそは死花しにばな、ゑらさうに見えたといふ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
日は丘のうへてゐて、頸筋くびすぢからむしり取つたせんのやうだ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
美女の頸筋くびすぢは後ろから、二太刀三太刀斬られて居りますが、刄物がなまくらなのか、腕がにぶいのか、到頭切り落し兼ねたまゝで、その上不思議なことに兩掌りやうてをしかと
「自分の粗相そさうにしても、姐御の頸筋くびすぢへ傷を付けるのはむごたらしいねえ」
周圍あたりには誰も居ません。親分に遠慮して皆な外へ出て了つたのでせう。亥太郎の執念深さうな青い眼だけが、お珊の美色にからみ付くやうに、その顏から、頸筋くびすぢから、縛られた胸を見詰めて居ります。
頸筋くびすぢに鼠、左右の腕に牛と虎、背に龍と蛇、腹に兎と馬——
ヘタヘタと坐り込んで、頸筋くびすぢの汗をやけに拭いて居ります。