露次ろじ)” の例文
魚勝うをかつ肴屋さかなやまへとほして、その五六軒先けんさき露次ろじとも横丁よこちやうともかないところまがると、あたりがたかがけで、その左右さいうに四五けんおなかまへ貸家かしやならんでゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
寝鎮ねしずまった家の軒端のきばや、締め忘れた露次ろじに身をひそめて、掘割ぞいの鋪道に注意力をあつめていた。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで彼等は、台所へ押掛けた。そこはこの家の裏口になっていて、幅三尺位の露次ろじが、隣に並んだ三軒の家の裏を通って、表通りとは別の通りへ抜けられるようになっていた。
銀座幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
魚勝と云う肴屋さかなやの前を通り越して、その五六軒先の露次ろじとも横丁ともつかない所を曲ると、行き当りが高いがけで、その左右に四五軒同じかまえの貸家が並んでいる。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
追いついて見ると、小路と思ったのは露次ろじで、不断ふだんの自分なら躊躇ちゅうちょするくらいに細くて薄暗い。けれども女は黙ってその中へ這入はいって行く。黙っている。けれども自分に後をけて来いと云う。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いまだにい町になり切れないで、がたぴししているあのへん家並いえなみは、その時分の事ですからずいぶん汚ならしいものでした。私は露次ろじを抜けたり、横丁よこちょうまがったり、ぐるぐる歩きまわりました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)