ひいな)” の例文
源氏物語の「總角あげまき」の卷で、長患ひのために「かひななどもいとほそうなりて影のやうによわげに」、ふすまのなかにひいなかなんぞの伏せられたやうになつたきり
黒髪山 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
居住いずまいは心を正す。端然たんねんと恋にこがれたもうひいなは、虫が喰うて鼻が欠けても上品である。謎の女はしとやかに坐る。六畳敷の人生観もまたしとやかでなくてはならぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あるいは銀色のあおく光るものあり、またあかがねさびたるものあり、両手に抱えて余るほどな品は、一個ひとつも見えないが、水晶の彫刻物、宝玉のかざりにしききれひいな香炉こうろの類から
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
カレンダーめくりあらはるひいなの日
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
かざれるひいなの玉の殿を
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
此方こなたてすりつかまりたるわが顔を見て微笑ほほえみたまいつつ、かいなさしのべて、葉さきをつまみ、しないたる枝を引寄せて、折鶴、木𫟏みみずくひいなの形に切りたるなど、色ある紙あまた引結いてはソト放したまう。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひいなしたゞ掃除せしばかりなり
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
桃の花片そこに散る、貝に真珠の心があって、ひいなしたう風情かな。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美しきぬるき炬燵やひいなの間
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
謡ひやめひいなの客を迎へけり
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
好もしく低き机やひいなの間
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)