隨意まゝ)” の例文
新字:随意
世の隨意まゝならぬは是非もなし、只ゝいさゝ川、底の流れの通ひもあらで、人はいざ、我れにも語らで、世を果敢はかなむこそ浮世なれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
渠等かれら無頼ぶらいなる幾度いくたびこの擧動きよどう繰返くりかへすにはゞかものならねど、ひとそのふが隨意まゝ若干じやくかん物品ものとうじて、その惡戲あくぎえんぜざらむことをしやするをて、蛇食へびくひげい暫時ざんじ休憩きうけいつぶやきぬ。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ヘイ水揚ものも御座りましたが夫も大略あらかた結了かたづいて少のひまを得ましたより參りしわけも外ならず時も彌生やよひの好時節上野隅田すみだの花も咲出さきいで何處も彼所もにぎはふゆゑ貧富ひんぷを問ず己が隨意まゝ割籠わりごを造り酒器さゝへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
變りし世は隨意まゝならで、せる都には得も行き給はず、心にもあらぬ落髮をげてだに、相見んとこがれ給ふ妻子の恩愛は如何に深かるべきぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
わらはこそは中宮の曹司横笛と申すもの、隨意まゝならぬ世の義理に隔てられ、世にも厚き御情おんなさけに心にもなきつれなき事の數々かず/\、只今の御身の上と聞きはべりては、悲しさくるしさ、女子をなごの狹き胸一つには納め得ず
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)