陶器やきもの)” の例文
その陶器やきものが自分の所有になった気がしないといったあの猶太ユダヤ人の蒐集家サムエルと同じものを新吉は自分に発見しておそろしくなった。
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「光悦どの、私には、今もいったとおり、陶器やきもののことなど、皆目わからないのですが、この茶碗は、よほど名工の作ったものでしょうな」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻楊枝つまようじ位な細い茎の薄青い色が、水の中にそろっている間から、陶器やきものの模様がほのかに浮いて見えた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と側にあった一合入りのさかずきりました。前には能くお屋敷で陶器やきもの薄出うすでの盃が出ました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、内弟子の華代子かよこが、餅菓子を好い陶器やきものはちへ入れて持って来ていった。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それとも陶器やきものの金魚かしら
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わけて瀬戸村一帯で焼かれる特色のある陶器やきものは、その淡雅な味が、茶の用器に多く需要されだしてきたので、職人たちでも、茶をのむことを知っていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新らしい陶器やきものを買っても、それをこわして継目つぎめを合せて、そこに金のとめかすがい百足むかでの足のように並んで光らねば
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
つま楊枝位なほそくき薄青うすあをいろが、みづなかそろつてゐるあひだから、陶器やきものの模様がほのかにいて見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
陶器やきものを積んだ手押し車を押して、素跣足すはだしで、町の者や、きれいな女の見る中を——その頃のみじめな自分の姿も思い出されるのだった。呉服屋へはいった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耕介の横びんに薄禿うすはげがあって、鼠にかじられたような腫物できものに、膏薬こうやくが貼ってあるところなど——かまの中できずになった陶器やきものの自然のくッつきとも見えて、一だんと
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古い陶器やきものに見立てていうならば、巧みも見得みえもない土味をき出しに、どうなと見たいように見てくれとしているノンコウ茶碗か唐津からつ徳利みたいな味の男だった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この近郷で、陶器やきものやしきとよばれているだけあって、茶わん屋の構えは、大きな土豪の家ほどあった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(この人はこんな陶器やきものまで自分で焼くのか。……この茶碗の作者がこの人だとは思えなかったが)
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この辺には、陶器やきものつくりのかま所々しょしょにあるので、そこで火入れをする日には絶えず煙が近所をいぶしている。けれど、その煙が去った後は、春先の空がよけいに美麗きれいに見られた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)