防寨ぼうさい)” の例文
薩軍の池辺いけべきちろうは、試みに、勧降状かんこうじょうを矢にむすんで、諸所の防寨ぼうさいに射込ませてみたが、ひとりの城兵も、降伏して出て来なかった。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
場所の要害はその努力にふさわしいものであり、防寨ぼうさいはバスティーユの牢獄の消えうせた場所に出現して恥ずかしくないものであった。
パリーのもろもろの革命の古い伝統によって、防寨ぼうさいが一つ作られた。街路の舗石はめくられ、ガス燈はねじ曲げられ、樹木は倒され、一台の乗合馬車がくつがえされた。
防寨ぼうさいの五十人の男は、やってきてからその時まで十六時間のうちに、居酒屋にあったわずかな食物をすぐに食いつくしてしまった。
よしややって来ても、海上には北条家の船手が船列をしいて見張っているし、みさきの突端から前浜へかけては、幾多の防寨ぼうさいが築かれてもいる。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それら革命の偉大な防寨ぼうさいは、勇壮の集中する所であった。異常なこともそこでは当然だった。勇士らはそれを互いに驚きはしなかった。
これは堅田かただから石山あたりに、いまなお蠢動しゅんどうしている僧門内の、反信長勢力を駆逐くちくし、途中の諸処に構築中の木戸防寨ぼうさいなどを撃砕げきさいしてゆくものだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしその以前に男の様子をうかがったら、彼が特別の注意をもって防寨ぼうさいの中や暴徒らの間を観察してるのが見られたはずである。
短兵急に押しよせた張飛も、蓑虫みのむしのように出てこない敵には手の下しようもなく、毎日、防寨ぼうさいの下へ行っては
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村の入り口には防寨ぼうさいが施された。しかしながら、プロシアの霰弾さんだんの第一の連発によって、全軍は再び敗走をはじめ、ロボーは捕虜になった。
中腹、山上にかけて、十数ヵ所のけん防寨ぼうさいをかまえていた山徒の守りを突破して、全山をけまわった織田軍の兵は、火を放って、烈風に喊声かんせいらした。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その翌日マヴォーは、メニルモンタン街の防寨ぼうさいで死んだ。プルトーという男は、同様に戦死したのであるが、その時マヴォーを助けていた。
その極楽寺坂は、みさきの山の横腹を中断した開鑿かいさく道路で、両がわ木も草もない岩壁だった。そのうえ前面の極楽寺川、針摺橋に二段陣地の防寨ぼうさいを構築していた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アンジョーラとクールフェーラックとコンブフェールとは、「防寨ぼうさいへ!」と叫んでバソンピエール街の方から進んだ人々のうちにはいった。
渭水いすいの流れもかれるほど、魏の軍馬はいちどに浅瀬へ馳け入った。一ヵ所や二ヵ所ではない。蜀軍はもちろん逆茂木さかもぎを引き、要所要所は防寨ぼうさいで固めている。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ニヴェルおよびジュナップから行く両道をさえぎっている二つの防寨ぼうさいのほかには、何らの障害もないというのであった。
そして、その返辞のように、堅田かただや石山方面の——京にはいる通路へ木戸や防寨ぼうさいを築いていたものである。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、どよめき立ち、厳白虎の弟厳与げんよは、楓橋ふうきょう(江蘇省・蘇州附近)まで兵を出して防寨ぼうさいった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
モン・サン・ジャンの村を奪取すれば、直ちにそこに防寨ぼうさいを施すことに定められていた第一軍団の工兵中隊が前を通る時、戦いの結果に確信ある彼は微笑をもってそれを励ました。
佐々は、時なるかな、わが生涯の大事——とばかり、越中一国をあげて、これを防寨ぼうさいに堅めた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俺たちはこれから瀘水ろすいの向う岸に移り、あの大河を前にして、うんと頑丈な防寨ぼうさいを築こう。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、にわか造りの防寨ぼうさいなので、風雨にも耐えられないし、兵糧や水にも困りぬいた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、鷺山へ向って、防寨ぼうさいを堅固にし、一戦をも辞していない。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、敵の防寨ぼうさいの背後へまわって忍ぶ潜兵らしかった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「防備があるのか。かたい防寨ぼうさいでもきずいてあるのか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何という厳しさだ。あの蜿蜒えんえんたる防寨ぼうさいは」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)