錆槍さびやり)” の例文
ぜひなく刀を押取って主膳の後ろ、或いはその左右から応援に出かけました。錆槍さびやりを借りて横合より突っかける者もありました。
そして、いざ天下の合戦となると、これが皆、一かどの錆槍さびやりとボロよろいをかついで、陣借りして、真人間に生きかえるのだ。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
合図をすると、二本の錆槍さびやりが、小三郎の胸のあたりでピタリと交されました。一瞬の間、万事終るでしょう。
錆槍さびやりで人が突けぬような事では役にたゝんぞ、仮令たとえ向うに一寸幅すんはゞ鉄板てついたがあろうとも、此方こちらの腕さえたしかならプツリッと突き抜ける訳のものだ、錆ていようが丸刃まるはであろうが
袖がらみ、錆槍さびやり、そのほか種ヶ島の鉄砲など、中世紀の武器遺物が飾ってあるのを尻目にかけて、二階に上り、雲に包まれた富士と向き合って、ボソボソした冷飯を、味のない刺身で二杯かッ込み
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
空っ風に、鼻を赤くして、のりの悪い白粉おしろいを厚くつけた女が、町中を走り歩いた。若衆は、錆槍さびやりだの、棒だのをもって、役所の表に立った。太鼓が万一の為に用意されて、近藤の家の軒に釣るされた。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
どこへ需要じゅようされてゆくのか、古道具屋のちりうずまったまま永年一朱か一でも買手のなかった鈍刀や錆槍さびやりまでが、またたく間に影を潜めてしまった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
合圖をすると、二本の錆槍さびやりが、小三郎の胸のあたりでピタリと交されました。一瞬の間、万事終るでせう。
猟師は、そこでふたたび錆槍さびやりをかつぎ出しました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と一声、錆槍さびやり穂先ほさきで、いきなり真上の天井板てんじょういたを突いた。とたんに、屋根裏をけものがかけまわるような、すさまじい音が、ドタドタドタひびきまわった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすが伊賀衆いがしゅう三羽烏さんばがらす菊池半助きくちはんすけも、可児才蔵かにさいぞうにみやぶられて、錆槍さびやり穂先ほさきひざにうけ、そのうえ、投げなわにかかって五体の自由をうばわれては、どうすることもできない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは俺も、自分が錆槍さびやりえぐられるよりも辛く考えているのだが、捕縄十手ほじょうじっては飽くまで正大公明でなければならぬ。いわば、神の裁罰に代って人間がお預りしているものだ。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古鎧ふるよろい錆槍さびやり一筋ひとすじ持って駈けつけ参りました、微衷びちゅうをおくみとり下さって、籠城の一員にお加えねがいとうござる。烏滸おこながら一死を以て、亡君の御恩におこたえ申したいので……
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばばあつえにして飛びこむから、長押なげしにかかっているその錆槍さびやりを、かしてくれい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一族をくして、その身も、刑吏の錆槍さびやりでえぐられたに違いありますまい。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)