錆刀さびがたな)” の例文
さけんだのはその拇指おやゆびを、竹童ちくどうにかまれたのであろう。むねをついて手をはなし、あけびまき錆刀さびがたなをザラリときかける。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、何の禁厭まじないか知れぬまで、鉄釘かなくぎ鉄火箸かなひばし錆刀さびがたなや、破鍋われなべの尻まで持込むわ。まだしもよ。お供物だと血迷っての、犬の首、猫の頭、目をき、ひげを動かし、舌をべらべら吐く奴を供えるわ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見て太田樣の陸尺共が聲々こゑ/″\に此土百姓の大馬鹿者おほばかものめ戸の明建あけたても知らぬか知らすばをしへて遣ふ稽古けいこに來いと散々さん/″\に惡口致候ゆゑ嘉川樣の事に付此多兵衞めもこらかね進寄すゝみよりつひ一言ひとこと二言ふたこと々爭いひあらそひし中双方錆刀さびがたな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いたのは錆刀さびがたな、身をかわして火の閃条を切りはらったが、なんの手ごたえもなく、ジャリン! とふたたび鳴っておどる火焔かえん車輪独楽しゃりんごま
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出水に洗われた川砂を掘りちらして、伊織は、錆刀さびがたなの折れだの、しょうの分らぬ古金ふるがねなど拾って興がっていたが、そのうちに
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのいわれのある古戦場こせんじょうで、その信玄のまごが、わずかふたりの従者じゅうしゃとともに、錆刀さびがたなで首を落とされるとは、なんと、あわれにもまた皮肉ひにく因縁いんねんよ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここまで足を踏みだして来ながら、わずか一の高札文や、三、四十本の錆刀さびがたなに行き当ったからとて、やわか、一歩でも足を後へ戻してよいものか。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「じゃあ、あれでいい。——おっ母、物置小屋の中の錆刀さびがたなならあるだろう」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「刑吏の錆刀さびがたなよりは、慈愛のやいばをうけてわしと一緒に死んでくれ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)