野蛮人やばんじん)” の例文
旧字:野蠻人
そうしてつねに科学者のごとき明敏なる判断と野蛮人やばんじんのごとき卒直なる態度をもって、自己の心に起りくる時々刻々の変化を、飾らず偽らず
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
「なんというおそろしいかおつきをしている野蛮人やばんじんであろう。人間にんげんうというのは、この種族しゅぞくではなかろうか!」と、こころおもったのでありました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
盗みという事も盛んにやるが、それかといって人を殺すような残酷ざんこくな事をする野蛮人やばんじんでもない。ごく温順な野蛮人である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ところが、その国民は極端に平和的な趣味を愛好した結果、崑崙茶の風味に耽溺たんできし過ぎたので、スッカリ気力をうしなって野蛮人やばんじんに亡ぼされてしまったものだそうです。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これは僕の友人の音楽家をモデルにするつもりです。もっとも僕の友人は美男びなんですが、達雄は美男じゃありません。顔は一見ゴリラに似た、東北生れの野蛮人やばんじんなのです。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかもその妻のごとき、純日本的な可憐かれんな女を、彼のいわゆる『野蛮人やばんじん』である西洋人の社会に、孤独で生活させることの痛ましさは、想像だけでもえがたい残忍事ざんにんじだった。
下流であがってはまた野蛮人やばんじんのようにその白い岩の上を走って来て上流の瀬にとびこみました。それでもすっかり疲れてしまうと、また昨日の軽石層かるいしそうのたまり水の処に行きました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まったく利口りこうそうなところの感じられない、野蛮人やばんじんのような、異様な相好そうこうでした。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あるいはまた、その思いは野蛮人やばんじんの船とともにその故郷の、はるかにへだたったイギリスへでも飛んで行ったのでしょうか。いやいや、この男の思いはそんなに遠くまで飛びはしませんでした。
つ人といえばとかく外部の敵に勝つように思わるるが、その外に障害物を一そうする人、もしくは破壊はかいする人と思われる。また野蛮人やばんじんの社会においては、破壊する人が一番の強者として尊敬される。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
野蛮人やばんじんには、歯磨き粉をませても、胃病がなおるということだ。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「そうだ、ぼくらは野蛮人やばんじんの命令に服することは恥辱ちじょくだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ちょうど僕も暇だったし、早めに若槻の家へ行って見ると、先生は気のいた六畳の書斎に、相不変あいかわらず悠々と読書をしている。僕はこの通り野蛮人やばんじんだから、風流の何たるかは全然知らない。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
野蛮人やばんじんよ、あの人は。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)