邂逅であ)” の例文
和蘭風な打扮いでたちで、尖柱戯をして居るのに邂逅であつたことがある、かれもある夏の昼過に、たまを転ばすやうな音を聞いたことがあるといひます。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
でもしめやかにかたうた兩性りやうせい邂逅であへば彼等かれらは一さいわすれて、それでも有繋さすが人目ひとめをのみはいとうて小徑こみちから一あひだける。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もう半時間もしたら自分の住まつてゐる田舎町に入らうとする頃、ロイド・ジヨージは寂しい野道で、とぼ/\歩いてゐる一人の小娘に邂逅であつた。
当時の欧化熱の中心地は永田町で、このあたりは右も左も洋風の家屋や庭園を連接し、瀟洒しょうしゃな洋装をした貴婦人の二人や三人に必ず邂逅であったもんだ。
出勤する途上に、毎朝邂逅であう美しい女教師があった。渠はその頃この女にうのをその日その日の唯一の楽みとして、その女に就いていろいろな空想をたくましゅうした。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
妾は近頃になく心の清々すかすがしさを感ぜしものから、たとえばまなこを過ぐる雲煙うんえんの、再び思いも浮べざりしに、はからずも他日たじつこの女乞食と、思いもうけぬ処に邂逅であいて、小説らしき一場いちじょうの物語とは成りたるよ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「権六どうじゃ、偉い所で、偉い人達に邂逅であったな」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よく邂逅であふ、—— CUCKOO といふ禽
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
大杉も引籠ひきこもって落付いて仕事をしていられないと見えて、日に何度となく乳母車を押しては近所を運動していたから、表へ出るとは番毎ばんこ邂逅であった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
村に近くなつて来ると、一群の人が行きちがひましたが、一人も知つた顔でありません。かれは村中に知らない顔はなかつたものを。それに邂逅であうた人のきものが、皆んな見慣れない仕立です。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
野枝さんとは数年前に銀座で邂逅であった時に大杉が紹介してくれた。が、十分か十五分の立話中、大杉から遠く離れていたからこの日が初対面同様であった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
この浮世を離れた場所で邂逅であうた人の姿には、リツプも少し驚きましたが、また近村のものでもあるかと思つたから、かれの重さうな荷を負ふのを、少し扶けて遣らうと急いで崖をりました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
賀古翁は鴎外とは竹馬の友で、葬儀の時に委員長となった特別の間柄だから格別だが、なるほど十二時を打ってからノソノソやって来られたのに数回邂逅であった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
信乃が滝の川の弁天へ参詣した帰路に偶然邂逅であったように趣向したというのだから、滝の川近くでなければならないので、多分荒川の小台おだいの渡し近辺であろう。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
この店先きで折々邂逅であう五分刈の大きな頭の近眼鏡をギラギラ光らした青年があった。いつでもドッカと腰を落付けてはしきりに都々逸や川柳の気焔を揚げていた。
三年来度々邂逅であう巨頭の青年だとも少しも知らなかった。
「用心しなけりゃイカンぜ」と或時邂逅であった時にいうと
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)