遣過やりす)” の例文
上野行、浅草行、五六台も遣過やりすごして、硝子戸越がらすどごしに西洋小間こまものをのぞく人を透かしたり、横町へ曲るものを見送ったり、しきりに謀叛気むほんぎを起していた。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真日中まひなかに天下の往来を通る時も、人が来れば路を避ける。出会いであえばわきへ外れ、遣過やりすごして背後うしろを参る。が、しばしば見返る者あれば、煩わしさに隠れおおせぬ、見て驚くは其奴そやつの罪じゃ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、矢張やつぱいしげるか、うか、しきり樣子やうすたくつたもんですからね。御苦勞樣ごくらうさまさか下口おりくち暫時しばらくつてて、遣過やりすごしたのを、あとからついてあがつて、其處そこつてながめたもんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わんとゆるをけて通る、腕車くるまと行違い遣過やりすごして、立停たちどまるはお丹なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お兼は黙って遣過やりすごして、再び欄干の爪の跡を教えた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)