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たいえい
ふりがな文庫
“
退嬰
(
たいえい
)” の例文
閑寂をもとめ平淡を愛しながら、なお決して世を離れるような
退嬰
(
たいえい
)
的な態度をとらしめるに至らなかった
所以
(
ゆえん
)
はここにあると私は思う。
左千夫先生への追憶
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
文芸に対するこのような解釈は、私には少しも
退嬰
(
たいえい
)
的なものとは考えられない。かえって非常に、健全なもののように思われる。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
日本は今日の財力を守って孤島に
退嬰
(
たいえい
)
し、果して
能
(
よ
)
く無限に繁殖するその人口を維持する事が出来ようか。
所詮
(
しょせん
)
不可能である。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それはまさしく幻滅と
萎微
(
いび
)
と沈滞と無目的と
退嬰
(
たいえい
)
と窒息……等々にとざされた灰色の一時代であった。出口はどこにもない。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
なぜと云うに、
縦
(
よ
)
しや
強
(
す
)
ねてことわって見たい情はあるとしても、
卑怯
(
ひきょう
)
らしく
退嬰
(
たいえい
)
の態度を見せることが、残念になるに
極
(
き
)
まっているからである。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
奉仕のあとが近代的でなく、又如何にも消極的で、
退嬰
(
たいえい
)
主義のところがあるのは、まったく欠点であるというて可い。
僧堂教育論
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
左右田博士は「文化主義の論理」という論文の中で「あるいはあるがままの状態に妥協をなして惰眠を
貪
(
むさぼ
)
らんとする保守主義、
退嬰
(
たいえい
)
主義、凡俗主義、常識主義、 ...
婦人指導者への抗議
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
特
(
こと
)
に秀吉の軍略に先手先手と
斬捲
(
きりまく
)
られて、小田原の孤城に
退嬰
(
たいえい
)
するを余儀なくされて
終
(
しま
)
って居る上は、
籠中
(
ろうちゅう
)
の禽、
釜中
(
ふちゅう
)
の魚となって居るので、遅かれ速かれどころでは無い
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私が平次、八五郎を書くと、回顧的だとか
退嬰
(
たいえい
)
的だとかいわれるが、それは間違いで、江戸のもつたしなみとか、江戸の所作とか、江戸の
郷愁
(
ノスタルジア
)
とか、これを忘れてはいけない。
平次放談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
世界無比の軍隊を有する日本民族が、どれだけの軟弱、
退嬰
(
たいえい
)
外交を続けて来ました事か。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
退嬰
(
たいえい
)
を悲しむうちはまだ脈があります。退嬰を詩に味わうようになったらおしまいです
ガルスワーシーの家
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
万事に旧弊で
退嬰
(
たいえい
)
的な人ではあったが、近来上方舞が時勢に取り残されて行くのを見ては
流石
(
さすが
)
にじっとしていられず、機会があれば東京へ打って出ようと云う考が動いていたこと。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
故にこの恐怖の吾人に要求する所は、躊躇にあらず、顧慮に非ず、因循に非ず、
退嬰
(
たいえい
)
に非ず、自失の予感に非ず、小成の満足に非ずして、実に完全なる努力の充実を促がすの戒心なり。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
兄の年と共に保守的な、いや
退嬰
(
たいえい
)
的ですらある身の処し方は、いま知ったわけでもない。で、これ以上論争する心にもなれず、胸中の火を、ぶつけてみる気にもなれなかったものらしい。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、墺海軍は依然として、
退嬰
(
たいえい
)
そのもののごとく自港の奥に潜んでいた。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
日本の歴史は少年のころよりわたくしに対しては隠棲といい、
退嬰
(
たいえい
)
と称するが如き消極的処世の道を教えた。源平時代の
史乗
(
しじょう
)
と伝奇とは平氏の運命の美なること落花の如くなることを知らしめた。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
動
(
やや
)
もすれば
退嬰
(
たいえい
)
保身に傾かんとする老齢の身を以て、危険を覚悟しつつその所信を守りたる之等の人々が、不幸
兇刃
(
きょうじん
)
に仆るとの報を聞けるとき、私は
云
(
い
)
い難き深刻の感情の胸中に渦巻けるを感じた。
二・二六事件に就て
(新字新仮名)
/
河合栄治郎
(著)
俳句において代表されている「さび」の感覚などのうちに
退嬰
(
たいえい
)
し、徳川末期に到っては身分制に属しながら実力はそれを凌駕している町人階級の文学としてそこでだけは武士の力がものをいわぬ遊里
私たちの建設
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
というきわめて
退嬰
(
たいえい
)
的な考えも、一応吟味してみる必要がある。
動力革命と日本の科学者
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
その物質生活を
退嬰
(
たいえい
)
し得るだけ退嬰せよ、飢えた動物のように如何なる
不味
(
まず
)
い物でも取って露命だけを
繋
(
つな
)
げというに等しい施設は愛をも聡明をも欠いた非人道的な施設だと思います。
婦人指導者への抗議
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
何事にも
退嬰
(
たいえい
)
的な本家が、女の洋行などと云うことを簡単には許しそうにもないので、又
駈落
(
かけおち
)
でもされたら大変であるから、———と、多少
嚇
(
おど
)
かすような意味合で話して貰う、と云う訳であった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
“退嬰”の意味
《名詞》
退嬰(たいえい)
尻込みして、後に引くこと。新しい物事を積極的に取り入れようとしないこと。
(出典:Wiktionary)
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
嬰
漢検準1級
部首:⼥
17画
“退嬰”で始まる語句
退嬰的
退嬰派
退嬰策
退嬰主義
退嬰自屈
退嬰萎縮