輔弼ほひつ)” の例文
この輔弼ほひつに加えて、さらに、丞相顧雍こよう、上将軍陸遜りくそんをつけて共に太子を守らせ、武昌城において、孫権はまた、建業に還った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかる不当の勅語は、政府の大臣らが、輔弼ほひつの責任をあやまったものである。起案者伊藤博文、井上毅の大きな責任である。
陛下に仁慈の御心がなかったか。御愛憎があったか。断じてそうではない——たしかに輔弼ほひつせめである。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
さて、このような為政者の態度は、実際政治の上においても、憲法によって定められた輔弼ほひつの道をあやまり、皇室に責任を帰することによって、しばしば累をそれに及ぼした。
……それに老師は今日まではいつもそれがしの話相手として輔弼ほひつの任を尽くされたばかりか天蓋山にかねありと最初に発見なされたのも、その発掘をこのそれがしに進められたのも老師でござった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天皇の周囲には「諮問」「輔弼ほひつ」の名にかくされた独裁支配の最も野蛮な遂行機関として、元老、内大臣、枢密院があり、特に封建的・軍事的支配のためには、天皇を中心として専門の元帥府
系譜をみても明らかなごとく、欽明きんめい天皇より太子に至るまでの皇室には、蘇我一族の血統が最も親しくむすばれている。武内宿禰たけのうちすくね以来の名門として稲目いなめ輔弼ほひつの大任を背負ったことも無視出来ない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
第五十五条 国務大臣ハ天皇ヲ輔弼ほひつせきにん
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
よく経綸けいりんの業をべ、めぐりのぼ輔弼ほひつえい
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天下の泰平をはかり治安民福を任とする位置にありながら、諸国へ密使を通わせ、みずから乱をつくるなど大政輔弼ほひつの身にあるまじき狂態。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだし、このようなことは、輔弼ほひつの大臣や側近の者たちに、賢明な人物がひとりもいないためであろう。
すてて戦いながら、なお戦いが振わぬのは、帰するところ、帝徳の欠如けつじょか。輔弼ほひつの悪さでおざるまいか
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……陛下も何とぞ先帝の英資にあやかり給うてよく輔弼ほひつの善言を聞き、民をいつくしみ給い、社稷しゃしょくをお守りあって、先帝のご遺命をまっとう遊ばさるるよう伏しておねがい致しまする。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
篤厚とっこうにして恭謙、多少、俗にいう総領の甚六的なところもあるが、まず輔弼ほひつの任に良臣さえ得れば、曹家の将来は隆々たるものがあろうと、重臣たちにもその旨は遺言されてあった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵馬倥偬へいばこうそうの世にかえりみられず、この名誉ある権門たちが、ひどく物に貧しく、その貧しさにいじけて、すこしも、君側の朝臣あそんであり輔弼ほひつ直臣じきしんであるという、高い気凛きりんも誇りも失っているのを
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尊氏はさらに、都のすみに逼塞ひっそくしていたさきの左大臣近衛経忠をさがし出させて、なにかと、輔弼ほひつの任を、このひとに嘱した。すべてそろそろ次代の朝廷づくりのしたくであった。——これをである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)