軽羅けいら)” の例文
旧字:輕羅
現に古代には軽羅けいらをまとつた希臘ギリシヤ羅馬ロオマ等の暖国の民さへ、今では北狄ほくてきの考案した、寒気に堪へるのに都合の善い洋服と云ふものを用ひてゐる。
そして彼自らの手で紡ぎ、織り、裁ち、縫ひ上げたところの、彼の肉体以上にさへ彼らしい軽羅けいらをのみまとふて今、彼一人の爽かなみちを行つてゐる。
そして彼自らの手で紡ぎ、織り、裁ち、縫ひ上げたところの、彼の肉体以上にさへ彼らしい軽羅けいらをのみまとふて今、彼一人の爽かなみちを行つてゐる。
我が一九二二年:01 序 (新字旧仮名) / 生田長江(著)
ことに驚いたのは、彼の女の肉体や頭髪や軽羅けいらすべてにちりばめて居る金銀宝玉きんぎんほうぎょくが、近くで見ると大概たいがい真鍮しんちゅうか、ブリキだか、ガラス玉で出来て居る。………
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その中には、歯車や電池がぎっしりまっているかと思いのほか、身に軽羅けいらをつけた若い女の死体があった。とり出してみると、それはりゅう夫人に違いなかった。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「でげすな、シルクてえのは、只今それお話の、お白様しらさまの口からお出ましになって、願わくは軽羅けいらとなって細腰さいようにつかん、とおいでなさるあの一件なんでげす」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
アペルレースの諸画中もっとも讃えられたは嬌女神アフロジテーが海より現じた処で、その髪よりしぼり落す水滴が銀色の軽羅けいら様にその体に掛かる。実に何とも言われぬ妙作だった。
一等室のほうからも燕尾服えんびふくの連中がだんだんにやってくる。女も美しい軽羅けいらを着てベンチへ居並ぶ。デッキへはろうかなにかの粉がふりまかれる。楽隊も出て来てハッチの上に陣取った。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ふきあげのかたわらにもう一つのふきあげのように白いしぶきの柱が立ちあがって、それが軽羅けいらまくのように広がって流れゆき、池の水ぎわにいたるとその幕のなかから昼間の老人が現われてきた。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
大路なる糸房しばうに見たる軽羅けいらをば掛けてなびけるアカシヤの枝
軽羅けいらの裾を翻して、花弁はなびらいているのであります。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)