かえ)” の例文
旧字:
不意に自己を失ったような引ッくりかえかたをした白衣の体には、どこから飛んで来るのやら、得態えたいの知れぬ矢が突き刺さッていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉凶にかかわって日時をかえるの旧慣を絶つとも、下気は泄出の様子までも公報する外国風を採るなどの事なきを望むと、かく答えた予の書牘しょとくを読んで
私どもは何度か自分で神にかえろうと思って努力してみますが、できないで我らを牽転し給えと祈り求めます。それを牽転して下さるのはイエス・キリストです。
うーむと、服部太蔵は、仰向けにひっくりかえった。然し彼の浴びたのはミネ打ちであって、単に、眼をくらましたに過ぎないらしい。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
エレミヤ記に「エホバよ、汝はわが神なれば我を牽転ひきかえし給え、しからば我かえるべし」(三一の一八)とあるごとく、自分で転りたいと思うが転れないという嘆きをもちます。
一閑はね退いたが、もう七十ぢかい老齢である。体に粘ばりのないせいか、その勢いのまま、仰向けにひっくりかえった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我まことにエフライムのみずから嘆くを聞けり、いわく汝は我をこらしめ給う、我はくびきに馴れざるこうしのごとくに懲しめを受けたり、エホバよ、汝はわが神なれば我を牽転ひきかえし給え、しからば我かえるべし。
横になっている者も、仰向けにひっくりかえっている者も、胡坐あぐらの中へかものように首を突ッこんでいる者も——
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
槍の千段を持って引っ張っていた薩兵は、勢いよく後ろへ引っくりかえった。露八は、離した槍へまた飛びついて、くるとすぐ、相手の者がち上がるところを
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、遊女の一人が、褌の端をつかまえて、引っくりかえす。法師は大ゲサに蛙腹かえるばらを仰向ける。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死んだと思った途端に、上の横竹が折れたのか、古い綱が切れたのか、春作は、流しの手桶の上へ、ひっくりかえっていた。桶の水をかぶったので、思わず、大きな声を上げたらしい。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すてんと、勢いよくまたたおれた。こんどは起てなかった。左の脚の関節かんせつあたりから出血している。引っくりかえされた亀のような形をして、官兵衛はまだく片脚と両手の槍を振りまわしていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つい百日ほどな間に世は一ぺんに引っくりかえった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九兵衛はクルリと一つかえって居坐りになりながら
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
抱きついて、引っくりかえした。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)