蹶起はねお)” の例文
宮はやにはに蹶起はねおきて、立たんと為れば脚のいたみもろくも倒れて効無かひなきを、やうや這寄はひよりて貫一の脚に縋付すがりつき、声と涙とを争ひて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「お村殿には御用人何某と人目を忍ばれさふらふ」とあざむきければ、短慮無謀の平素ひごろを、酒に弥暴いやあらく、怒気烈火のごとく心頭に発して、岸破がば蹶起はねおき、枕刀まくらがたな押取おつとりて、一文字に馳出はせい
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「早くしねえかい、べらぼうめ。」と叱るがごとくにいって、と縁側に出た、滝太郎はすっくと立った。しばらくして、あれといったが、お雪は蹶起はねおきようとしてともしを消した。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちようあたりてひるむその時、貫一は蹶起はねおきて三歩ばかりものがれしを打転うちこけし檳榔子のをどかかりて、拝打をがみうちおろせる杖は小鬢こびんかすり、肩をすべりて、かばん持つ手をちぎれんとすばかりにちけるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
予は叫ばむとするに声でず、蹶起はねおきて逃げむとあせるに、磐石一座ばんじやくいちざ夜着を圧して、身動きさへもならねば、我あることを気取らるまじと、おろか一縷いちる鼻息びそくだもせず、心中に仏の御名みなとなへながら
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)